短編
□ナカジとゴクソツ。
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夏の正午、コンクリートジャングルの中、およそ似付かわしくない格好の男が二人対峙する。
「ご機嫌よう?」
ぎょろり、と大きな眼で相手の眼を掴みながら軍人のような男、ゴクソツは相手へまるで厭味のような挨拶をする。
「どちらさまで」
「ひょ!これは失敬、わたくしあさきのゴクソツと申します。先日の宴で見かけました故、ご挨拶をと思いまして」
うひひうひひと笑うゴクソツなど気にも止めず、相手、ナカジは思案する。結果、あさきの者と言っているのだから変質者または犯罪者ではないだろうという結論に至った。思い出すつもりなどない。
「挨拶だけなら、先へ行かせてもらう」
「せっかくなのですから遊びましょう?このようなところに長居したら腐ってしまいます!」
強引にナカジの手を引きながら、ゴクソツは楽しそうに歩きだす。ナカジは急な出来事に常識という脳はただの塊となった。
なにかに気付く頃、熟れた実は暗闇に溶けていた。
(はじまり?)