Novel

□ヒマ。
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「・・・・・・・・・・。」


・・・ヒマだ・・・。

グリードは血管のようなパイプに囲まれた地下道をぼんやりと歩いていた。

自分を産んでくれた親父殿に頼まれ、今は地下の見張りをしてる。

しかし、侵入者など来ず毎日毎日退屈でしょうがなかった。

そして今日もただ地下道をなんとなく歩いているだけ、だった。

不意に天井を見上げ、ふとこんな事を思った。

(・・・空、晴れてんのかな・・・。)

そういえば最近はずっと地下の番をさせられていて暫く表に出ていない。

「・・・・・・。」

少しの間悩んでから、ちょっとぐらいいいだろうと気分転換もかねて外への入口へ向かった。


・・・・・・・・・・・・

扉を開けると地上の光の眩しさに思わず目を細める。
空は雲ひとつない青々とした、晴天だった。

きっと地下にずっといたせいだろう。

やたらと周りが眩しく見える。

ある程度外の眩しさにも慣れ、グリードは何気なく深呼吸をした。

(・・・・・・あ。)

伸びをする形で気づいた。
(空気が・・・違う・・・・・・。)

グリードの吸い込んだ空気は地下のとは比べものにならないほど、澄んでいた。

地下はいつも薄暗く、ドロドロとした空気をしていた事に今気づいた。

外は、こんなに透明で澄み渡っている。

(・・・・・・綺麗だ。)

そう、思った。

眩しい太陽の輝きも、ゆっくりと流れる空気も、自分の周り、全てが美しく感じた。

そう思った。

でもー・・・

グリードは外の世界にクルリと背を向け、地下の入口へと歩く。

・・・何故かって?

自分はこんな眩しい所で生きてはいけないから。

こんな美しい場所に居てはいけないから。

だって俺は闇の中の生き物だからー・・・。

だから・・・。



少しだけ

外の世界もいい ーー・・・

と思ったなんて

誰にも言わない。



・・・つか、言えねー。




end.


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