Give me a break!
□act.1
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突然ですが皆さん、
『ダドリー・ダーズリー』
という人物をご存知でしょうか。
act.1
はい、どうもはじめまして。
かの有名なイギリス産魔法系長編物語、ハリーポッターの世界に転生トリップしちゃったお姉さんですこんちには。
ツッコミとか認めません。
一体どんな経緯でトリップなんてぶっとんだ事態になっちゃったのか、全く分かんないし。自分の第一声が「おぎゃあ」で、目玉飛び出さんばかりに驚いたのはお姉さんの方だからね。
誰か親切な神様的な人、説明プリーズ。
しかも周りがいきなり外国で、軽く脳みそパーンな危機。そのせいで平均的ラテン系テンションの1.2倍浮かれた人間に育ってしまったんだよどうしてくれる。
前世では蝶よ花よと育てられた大和撫子と呼ばれるお淑やかな生粋のお嬢さ…すいませんごめんなさい嘘です冗談です。一般家庭出身のほとんど目立たない腐り気味のモブでした。
ま、いいじゃないか。
今更キャラ変更したところで誰も文句は言わないさ。中身は一緒でも一応別人なんだから。
でもとりあえず転生トリップということで、極力話の筋書き変えたりせずに三歩下がって傍観して生きようと誓ったお姉さんです。
あはっ。自分の身が可愛いのは全国共通だよね。
ストーリー通りに進んでくれると、もしもの時も色々裏で画策出来るしね。現状把握もばっちりじゃないか。原作読んだの大分前だから大まかな流れしか覚えてないけど。
傍観マンセー!
夢小説に傍観制度取り入れてくれたお嬢さんは神様だ!
だってお姉さんももう精神的に年だしね。
もがいてもがいて足掻くのは若い子の仕事なのですよ。ね?
ってことで、この世界の平和のために頑張ってくれハリー少年☆
「お姉ちゃん!ねぇどうしよう!」
「ん?どうしたイケメソ予備軍な我が弟よ」
「僕宛ての手紙が来たんだ!」
「え、スルー?朝から酷いよ。もっと構ってくれなきゃお姉ちゃんいじけるから……って、手紙?」
「うん!これ!」
分厚めの薄黄色い封筒を振る純真無垢なマイブラザー。おお、嬉しそうだ。満面の笑顔が可愛いぞこのやろー。
とか言ってる場合じゃないぞ私。
その手紙の裏に鷲と穴熊と獅子と蛇の絡み合ったごちゃごちゃした紋章が見えて、漸く寝ぼけていた頭がすっきりした。
これ、とうとう本編スタートな予感じゃないか?あれどう見てもホグワーツの招待状だよね。
いやうん。私の誕生日も過ぎたし、動物園で蛇とこんにちは事件も穏便に済んだからそろそろかなー、とは思ってたよ。
だけど随分突然だなぁ。これから一年近くこの子とお別れかと思うと寂しいや。餞別は何にしよう。
ま、新しい学校できりきり精進しなさい魔法使いくん。
お姉さんは安全な我が家でぬくぬくしてるから。
「あっそうそうお姉ちゃんにも来てたよ、同じ封筒の手紙!」
「なんですと!!?」
…叫ばせてもらったところで、遅ればせながらもう一度自己紹介いたします。
私、名前をアイリス・ダーズリーといいまして。
何を隠そう、あのハリー・ポッターのいとこ――ダドリー・ダーズリーの成り代わりだったりするんです。