デュラララ 小説

□もしも、帝人くんがヤクザだったら 1話目
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お線香の匂いが部屋中に充満している。昨夜から続いているこの状況のせいで、服どころか体にも染みついているかもしれない・・・


なんてことをぼんやりと考えている。








1話目  ヤクザにならへん?








周りは、昨日とは打って変わって、近所の方や帝人が知っている人の顔はなく、父や母の古い知り合いの顔群ればかりだ。・・・・というか、何故か分からないが強面の中年男性ばかりなような・・・



帝人の父親も母親も親戚が一人もいない生涯孤独の身であったため、父達の知り合いであると言う数名の強面の男性が今夜も特別に葬式をしてくれるように頼んできたのだ。


実際、僕は両親の過去をよく知らない。


なら、せっかく彼らの為に集まってきてくれた方々をおいそれと追い返すことはできず、今夜もこの部屋にはたくさんの人が集まっている。



「すまないねぇ 帝人くん 無理言ってもうて」



関西のなまりがある男性が、帝人が座っている所ににじり寄ってきた。


額に大きな傷があり、ヤクザ映画に出てくる親分のような顔をしている。


本来、平凡な生活を送る竜ヶ峰帝人には縁遠い人間であるに違いない。


父と母との最後の別れのために、何故こんなにもたくさんの(ルックスや雰囲気が)堅気でない人間が集まるのか、その時の帝人には知る由もなかった。


だが、彼らの本当に両親を悼む気持ちが伝わってきたため、帝人は彼らの望み通り葬式を二分にしたのであった。


最初、予想外のことに驚いていた帝人だが一度葬式が始まれば徐々にその場に慣れ、そして両親を失ってしまったという消え入ることがない喪失感と悲しみが帝人に襲って来たのであった。


葬式が進行する中、多くの男達の啜り泣く声が聴こえてきた。


中には父の棺に覆いかぶさり「鶴賀の兄貴!」と声を上げて、泣く男も少なくなかった。鶴賀とは父の結婚する前の名字である。


父は俗にいう婿養子のようなもので、自分の名字ではなく母方の名字に変えたのであった。


どうやらこの場に集まった人々は父の方に深く縁があるらしい。
というより、父を兄貴呼ばわりとは・・もしかして父は・・・


と・・ふと、父の棺へと再び目を向けるとそこには・・・

その場にそぐわない真っ白な男物の着物を着た・・・帝人よりも若い風貌の少年が焼香たいていた。


その少年の後ろには、その場にあう色ではあるが西洋の映画にでてくるようなクラシックなスーツを着こなす、同年齢の少年が控えていた。


その黒い少年の手には、それによく合いそうな帽子を持っていた。


『なんだか・・不思議な雰囲気の人達だ』


この場には帝人と彼ら以外に少年や子どもはおらず、余計に彼らの存在が目立っていたが、帝人はそれ以外のことをも感じ取っていた。


強面の男性達にはない・・・そう威圧感・・・絶対的な存在感・・・



そして・・・


父の棺の蓋、顔がのぞける所へと顔を近づけ、何事かを呟きすぐに棺から離れた。後ろにいた少年は棺へと深くおじぎする同じようにすぐ離れ、白い着物の少年の後を追って、室内の隅っこの方へと下がって行った。
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