歌王子
□第1小節
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なんだか最近セシルが私のお部屋に居座っています。誰ともお話できないのはそれはそれは最上級につまらないらしく、唯一お話ができる(パソコンで)私という存在はかなりデカいらしい。だがしかし、セシルが私のお部屋に居るということはハルちゃんが心配しているということなのです。
春「クップルー!クップルー!」
『どうした?ハルちゃん。』
春「あ、ユウちゃん。最近クップルを見かけないので捜しているんです。」
ほ・ら・な!!マジでセシルのヤローハルちゃんに迷惑かけるからこっち来んなっつってんのに!めっさ必死に捜してるじゃんか!!いや、涙目で心配しているハルちゃん超可愛いけどね!
『私も捜すよ。2人で捜した方が早く見つかるもんね!!』
春「ありがとうございます!」
やめて!そんな感謝される人間じゃないんですよ私!!いや、なんかすみません。セシル(いまはクップル)がどこにいるか心当たりがあるっつーか、なんつーか。この間お気に入りの場所が学園内にあるって話を聞いてたんで、そこを捜してみますはい。
『おーい、クップルやーい。ハルちゃん心配してるぞー。出てこーい!』
(しーん……。)あれ?学園の庭がとても綺麗で気に入りましたって言ってたじゃん!庭じゃないのか!?おかしいな。じゃあどこにいるんだ?残念なことに他の心当たりなんてねーぞ!!あぁー、ハルちゃんマジごめん。見つかんないかも…。いや、頑張って捜すけどね?
『クップルー!出てくるのにゃー!ハルちゃんが心配してるにゃー!!』
ク「にゃーん!!」
『って近くにいたんかい!!』
アンタいま私の真横の茂みから出てきましたよね!?めっさ近くにいたんじゃん!!一発目の呼びかけで出てこいよ!!なんのために1回待ったんだよ!!こっちはハルちゃんのために必死なんだって!
ク「にゃにゃにゃーん。にゃにゃ。」
『なに言ってるか全くわからん。はい、便利なパソコン。』
ク「(カタカタっカタっ。)」
『"最近の侑李はワタシに冷たい。にゃーにゃー言ってくれない。なぜですか?"……ちょっ、まさか1回目の呼びかけは私がにゃーにゃー言わなかったから答えなかったってか!?』
勘弁してよー。あのねー、たまーに会うぬこ様ににゃーにゃー言うのは良いんだよ?でも、しょっちゅう会ってるセシルににゃーにゃー言ってるとさすがに疲れるんだって!!察しろよ!誰かが居るときはちゃんと怪しまれないようににゃーにゃー言うからさ!!
『とにかく、ハルちゃんマジで心配してるから行ってこい!』
ク「(カタカタっ。)」
『"わかりました…。"……はぁ。もう私のところに来るのは多くて週1のペースにしろ。毎日来て窓カリカリやっても開けてやんねーからな!』
セシルは1回私の方をなにか言いたそうな目でじーっと見た後、颯爽と姿を消したのだった。きっとハルちゃんのもとへ向かったのだろう。全くセシルも困ったもんだ。あんなに可愛いエンジェルに心配かけるなんて。
『さて、暇になったな。』
いや、実際は課題の山積みで全然暇じゃねーけど…。今回はこの前セシルが言ってたストーリー性のある詞にしてみようかな。どんなテーマにしよう。うーん……。(ブーッブーッブーッ。)
『ん?ハルちゃんから電話だ。もしもーし。』
春「あっ!!ユウちゃんですか?クップル見つかりました!捜していただいてありがとうございました!」
『おー。見つかったのか、良かったね!久しぶりに会ったんだから、たくさん可愛がってあげな!!』
春「はい!!それでは失礼します。」
(プーップーップーッ。)なんて礼儀正しい娘なんだ!!私じゃ真似できん。っつーかセシル速ぇーな、もうハルちゃんに会えたのか。あぁ、ぬこ様と戯れている可愛いハルちゃんが見たいな…。
『はぁー。でも邪魔しちゃ悪いしな。』
レ「どうしたんだい?レディ。ため息なんてついて恋煩いかい?」
『あーん?……なんだレンレンさんか。そうですね、恋煩いかもしれません。』
レ「っ!!……本当かい!?」
おいおい自分で言っときながらなんでそんなに驚いてんだよ!失礼だなレンレンさん!!私に恋という単語は似合わないって?そんなの自分が一番よく知ってるわ!!ほっとけ!
『嘘ですよ。仲のいい友達がちょっと遠くに行ってしまって寂しいんです。』
レ「へぇー。レディは普段サバサバして見えるけど、可愛いところもあるんだね。」
『普段は可愛くないってか?』
レ「おや?そう聞こえたかな?」
なんだよこの人!!女の子に優しいフェミニストじゃねーの!?なんか私に対してはもの凄く失礼だな!!私嫌われてる?それともあれ?私って男の子だったっけ?って、んなわけねーだろ!!
レ「クスっ、冗談だよ。百面相してるレディも可愛い。」
『んなっ…。バ、バカじゃねーのっ!?』
レ「ちょっと口が悪いのも、愛嬌があって良いよね。初めてのタイプだ。」
『……………。』
レ「この長くて綺麗な黒髪も……(ちゅっ)すごく良い。」
『なにしてくれてんj「レン!!侑李から離れなさい!!」
え、この人なに人?髪の毛にちゅーしましたけど!!我慢の限界で叫んでやろーと思ったら救世主トキヤが現れた。トキヤは見えるか見えないかという決して近くはないところに居るのに、こちらまで聞こえる大きな声で叫びながらもの凄いスピードで走ってきた。はっきり言ってホラーだ。
ト「はぁ…、はぁ。全く…、はぁ、あなたって人は…、はぁ、どうして、はぁ…、こうなんですか?」
レ「俺にはイッチーの言ってる意味が分からないね。」
『っつーかトキヤまず息整えよう!』
ト「すぅーはぁー。ですから!!なぜあなたは女性に対して誰彼かまわずそういったことを言うのですか!!」
レ「誰彼かまわずではないさ。侑李だから言ったんだ。」
『な、なんだと…!』
このタイミングで名前呼びとか心臓に悪いんだが…。私恥ずかしいんで帰って良いですか?曲作りのテーマ決まったんでさっさと書き起こしたいんだけど…。あ、ちなみにテーマは恋を知らない女の子。
ト「いい加減にしてください。侑李はあなたの周りにいる女性とは違うんです。」
『ちょっ、そんなはっきり言うなよ。傷つくじゃんか!!』
レ「知ってるさ。だからこその行動さ。」
無視ぃー!?ねぇ泣くよ?なにこの扱い。私いま空気なんじゃないかってくらいキレイに無視されたぞ!!この後、トキヤとレンレンさんの口論はヒートアップするばかり(正確にはトキヤだけヒートアップしてレンレンさんはそれを楽しんでる感じ)。周りに野次馬が出来てきたので、強制終了させて急いで自分のお部屋に帰りました。当たり前ですが、その日セシルは私のお部屋には来ませんでした。