歌王子

□第1小節
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ああぁぁぁー、なんにも浮かばない。作詞から進めようか作曲から進めようかとかの問題ではなく、なんにも浮かばない。この前リンちゃんの激励のおかげでやっとやる気が出たのに振り出しに戻った(なにも進んでいないので厳密には振り出しというよりもマイナス)。


『考えても無駄だから、いまはやめとこう。』


そうだな、無理矢理作った曲じゃあ後々納得できないもんな!って自分を正当化して漫画でも読むかな。漫画は人類の教科書だと私は思うんだ!友情愛情その他諸々を勉強することができるのだから!!


『っつーわけで、どれ読むかなー。寮に入るとき漫画たくさん持ってきて良かった。』

??「にゃー、にゃにゃーん。」

『おや?クップルさんかにゃ?』


いつも窓からお部屋に入っているのかにゃ?知らにゃかったにゃ!でも、残念だがエンジェルハルちゃんのお部屋はお隣にゃ。はいはい、待ってくださいにゃー。いま窓を開けますにゃーってクップルさん!!あにゃたにゃにくわえてらっしゃるのですかにゃ!?それ私が小学生の時に遊びで作ってた楽譜ぅー!!どっから取ってきたにゃ!?


『はーい、クップルさーんそれ返しましょうねー。もう恥ずかしいからやめてほしいのにゃー!!』

ク「(べしべしっ。)」

『ん、どうかしたかにゃ?』

ク「(べしべしべしっ!)」


えぇー!?にゃんかわからにゃいがクップルさんが楽譜を叩いておりますにゃ。にゃんだ?小学生の時に遊びで作ったその恥ずかしい楽譜を歌えっていうのかにゃ?ちょっ、いくらクップルさんのお願いでもそれは…。


ク「(じとーっ。)」

『はい、歌わせていただきますにゃ!』


めっさ見られたにゃめっさ見られたにゃ!!あの目は拒否することを許さにゃい目だったにゃ!っていうか歌わざるを得にゃい状況だにゃ!芹沢侑李、クップルさんのために心を込めて歌いますにゃ!聞いて下さい!!


??「やはりアナタの歌は素晴らしい。聞き惚れてしまいます。」

『ちょっ、どちら様ぁー!?』

セ「ワタシは愛島セシルといいます。」

『あ、私は芹沢侑李といいますってそうでなくて!!え、なんですか?不法侵入ですか?』

セ「ワタシはちゃんとアナタに部屋に入れてもらいました。」


なんだと!?そんな記憶はないぞ!私がお部屋に招き入れたのはクップルさんだけだ!ってクップルさん?クップルさーん!!……い・な・い!!嘘でしょクップルさん初対面の人と2人きりにしないでくれ!気まずい!


セ「ワタシは呪いをかけられて猫の姿になっています。いまはアナタの音楽のおかげで少しの間ですが元の姿に戻ることができました。」

『いいえ、私の音楽にそんな力はありmってクップルさんにゃのかにゃ!?』

セ「はい。いつもワタシの前でにゃーにゃー言うアナタはとても可愛らしいと思っていました。」


おいおい、あんた恥ずかしい言葉さらっと言える人種なのか?言われてるこっちがほんとマジで心臓爆発しちゃうからあんまりそういうこと言わんでくれ。声が綺麗だからなおさら破壊力抜群なんだよ!!


セ「でも、猫の姿ではそれを伝えることができない。とても悲しかった。」

『え、あの…クップルさんが実はセシルだっていうのは他に誰か知ってる人は?』

セ「いません。このことは2人だけの秘密にしてほしいのです。」

『わかった。けど、その呪いとやらは解けるもんなの?』

セ「はい、ワタシの国は音楽の国です。ミューズの力を借りて、サタンを倒すことができれば呪いは解けます。」


……うん、よくわからん。え、なに?音楽の国ってオーストリアのことか?んで、ミューズは音楽の女神様ってことだっけ?力を借りるってどういうことだ?え?もしかしてミューズってそっち?殺菌作用がある石鹸のほう?って意味わからん。が、もっと意味わからないのが最後に出てきたサタンという単語。いや、サタンの意味はわかるけども倒すってなに?この世に存在するって言うのか!?


セ「ワタシはアグナパレスの王子です。サタンを放っておくと、この世界から音楽が消えてsにゃにゃにゃー。」

『え、クップルさんに戻った。』


なんかもうキャパオーバーなんですけど。おとぎ話みたいだったから信じられないっていうか、あまり重く受け止められないというか。モヤモヤして曲作れねーよ!!いや、もともと今日はやる気なかったけどさ。


ク「(べしべしっ。)」

『え、セシルさんまた歌えってーの?』

ク「(フルフルっ。)」

『違うってか…。』


うーん、なにかクップルさんに戻ってしまったセシルとお話できる方法はないんか?私の言葉はセシルに伝わるのに、セシルの伝えたい気持ちが私には残念ながら届かない。うーん。中身はセシルのまんまだからなー。


『お?ひらめいちゃったぞ!セシルおいで。』

ク「にゃ?」

『じゃじゃーん!パソコンならセシルも大丈夫でしょ!!』


パソコンのキーボードはその姿でも打てるはずだもんな。我ながら良いアイデアだな!ほぼ音楽の為だけに使っているパソコンが、もの凄い役立つものに昇格した(セシル限定)。さあ!これで私に伝えたいことを打ち込むのだ!!


ク「(カタカタっ)」

『なになに、"ワタシはこの歌が好きです。この楽譜をアレンジすればもっと良くなります。"……でも詞がないんだよこの曲には。』

ク「(カタカタカタっ)」

『えーっと、"なにかテーマを決めてストーリー性を持たせれば良いのでは?"……なるほど。』

ク「(カタカタっ)」

『ん?"それから、猫の姿であるワタシの前ではいままで通りにゃーにゃー言ってください。"……マジでか。なんかセシルだって考えたら恥ずかしいじゃん!!』


それから私たちはしばらくの間にゃーにゃーについて言い合いを続けていたが長い長い討論の結果、ハルちゃんと友千香に怪しまれるのを避けるためにもぬこ様姿のセシルの前ではにゃーにゃー言うことになりました。たしかに怪しまれるのはマズい。はぁー、曲作りは明日頑張るとしてもう寝よう。頭使いすぎたから疲れた。


ク「(カタカタカタっ)」

『にゃんだって?"おやすみなさい、マイプリンセス。"……いや、その姿で言われても。ってかプリンセスってガラじゃにゃいんだけど。』


マイエンジェルならプリンセスという言葉もお似合いっていうか、ハルちゃんのためにプリンセスという言葉ができたみたいなね!!あ、なんか急に思ったんだけどセシルの国が音楽の国ってことはセシルは歌がうまいのか?あんな綺麗な声で歌われちゃったら、それこそ聞き惚れちゃうだろ。今度元の姿に戻ったときに歌ってもらおう。うん、そうしよう。


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