Allen
□第13夜 妄想文
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「可愛いコ相手に戦えませんよ」
…。今の台詞、あの人形に言ったんだよな、モヤシは?……。なんか…無性に腹立ってきた。一喝してやりたいところだったが、生憎先程のアクマの一撃が堪えたようで怒鳴る気力もなかった。取り敢えず話は聞いてみるか。
──数分後。
「…心臓の音がどんどん小さくなってるもの」
人形を哀しそうな目で見るモヤシ。…あ、更に腹立った。
「最後まで人形として動かさせて!お願い」
「ダメだ」
よし、やっと口が動いた。つかこれ以上モヤシとあの人形が一緒にいたらモヤシが取られる。嫉妬してると思われないよう、任務で来たとかイノセンスを守るためだとか言ってみる。まぁ、正論のはずだから怪しまれることはまずないだろう。
「今すぐその人形の心臓を取れ!!」
これでいい。これでモヤシは取られねぇはず…
「…と、取れません。ごめん…僕は取りたくない」
…あぁ、そうか。あの人形がお前を奪うのではなく、お前があの人形を気に入ったのか。
……っざけんな…!!
バシッ
枕にされていた団服をモヤシにおもいっきり投げ付けた。
「その団服はケガ人の枕にするもんじゃねぇんだよ…!!エクソシストが着るものだ!!!」
…本当は嬉しかったが。悪いな、モヤシ。
「犠牲があるから救いがあんだよ、新人」
体はある程度回復した。六幻を人形に突き付け、心臓を取ろうとした瞬間──
「じゃあ僕がなりますよ。僕がこのふたりの『犠牲』になればいいですか?」
お前…そんなにその人形が好きなのか…?
「僕が…アクマを破壊すれば問題ないでしょう!?犠牲ばかりで勝つ戦争なんて虚しいだけですよ!」
もう…殴ろう。
バンッ どさっ
チ…目眩が…。モヤシを殴った反動で俺はその場に崩れた。
「とんだ甘さだな、おい…。可哀相なら他人の為に自分を切売りするってか…?テメェに大事なものは無いのかよ!!!」
「………んだ」
「あ゛?」
「神田っ!君が大事なんですよ、僕は!!でも守れるなら守りたい!だから、言ってるんです!」
「……ッ///;」
クソモヤシめ!んなこと言われたら……クソッ//
「可哀相とかそんなキレイな理由、あんま持ってないよ。自分がただそういうトコ見たくないだけ。それだけだ」
泣きそうな…寂しそうな目で呟くモヤシ。そんな姿に何も言えなくなる俺。
──あぁ、この時もう既に俺はヤツに翻弄されていたんだな。
END
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