短編集

□一枚の写真
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総司は総司で、副長たる土方を指し置いて自分が写真のような高価な物に姿を写すのは気が引けるし、何より長い時間じっとしていなくてはならないと聞いてしまい、すっかりその気が失せている。

「留守の理由が職務と気まぐれでは後々違う」
「気まぐれって…」

情け容赦ない口上に唖然とする総司に向かって胸を張る。

「何でそう嫌がる?」
「土方さんこそ」

お互い無言で睨み合う。このままでは埒が明かないのは明白で。土方は盛大に溜め息を吐き、足を崩して胡坐を組むと、その膝に肘を付いて下から総司の顔を覗き込んだ。

「なぁ、腹を割って話そうぜ。理由を言え、理由を。」

ん〜と唸って天井を仰ぎ見ると、ぼんやり木目を目で追いながら考えた。総司の今までの経験からして、じっとするのが嫌と云う、半分以上を占める本当の理由は言いたく無い。

「副長を指し置いてって気もするし…」

絶対に馬鹿にされる…、確信していても言わなければ延々とにらめっこなのも分かっている。言う・言わないの、内心での激しい葛藤の末、仕方なしにぽそりと苦虫を噛み潰したような顔で小さく呟いた。

「ただ黙ってじっと座ってるのって云うのはどうも…こう…」
「性に合わないってか?!」
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