短編集

□黒壇の闇 コクタンノヤミ
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…何時からだろう。組織化した故に“長”がつく彼らは、藩邸や奉行所に行く事が増え、付き合いと称して遊郭に赴き、顔を合わせない日が増えた。呼ばれたと思えば、掛けられる言葉は命令だけ。
“寂しい”ー。子供であったなら素直に言えたかもしれない言葉が胸を塞ぐ。しまい込んだ感情を忘れようと、明るく振る舞った。

忘れた。

寂しい

平気だ。

悲しい

大丈夫だ

心は捻れた。そして夢が始まった。水月が鷲掴みにされるようなじりじりとした焦燥感にも似た感覚と、むっとする程の血の匂いに付きまとわれた。

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