短編集
□花冷えの宴
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江戸にいた頃はしょっちゅうこうして呑んでいたものだったのに。上洛してからこれまで、嵐のような毎日で、落ち着く間が無かった。…随分遠くに来たもんだ、土方は感慨深く眺めた。同門だとか、同士だとか、そんなじゃない確かな絆…。
「おぉ!揃ってるな」
「私達も呼ばれますよ」
「どうぞ〜」
近藤も山南も、やはり嬉しそうなのは、土方と同じ思いだからだろう。
「ほら、土方さんも」
いつの間に来たのか、総司が隣で笑っていた。
「この野郎、はなっからこういうつもりだったな?」
「たまにはね。息抜きも必要ですから」
ふわり、笑って小首を傾げた。
「…俺の負けだ」
そう言って笑うと、総司の頭をくしゃりと優しく掻き回した。
部屋の中には酒とスルメと笑い声が溢れていた。
「桜も咲いてるってのに、今日はまたえらく寒いな」
「こういうのを花冷えってんだろ?」
「なるほどね〜!」
終