短編集
□花冷えの宴
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「ア、タ、リ、メ!土方さん、スルメじゃなくてアタリメですよ」
2枚目を焙りながら総司は呑気に言った。焙り終わった方は平助が受け取り裂いている。
「馬鹿野郎っ!当たりだろうが外れだろうがどっちでも良いっ!俺は仕事してんだ!火鉢抱えてとっとと失せろっ!!!」
「外れだってさ〜」
「うわぁ…、洒落になってないですよ?」
「!!!!!!!」
猛烈な勢いで堪忍袋の緒が切れる、その瞬間
「買ってきたぞ〜」
原田と永倉がそれぞれ両手に徳利をぶら下げて、どちらも上機嫌で現れた。
「邪魔するよっ。歳さんも、いくっしょ?」
原田がくいっと呑むふりをして見せて、どっかり火鉢の前にあぐらをかいた。ここで宴会にする気満々だ。呆気に取られ、立ち尽くす土方の肩を叩いて、永倉も火鉢の前に座った。
「ぐい呑み持って来たよ」
「待ってましたっ!」
原田の声に振り返って見れば、盆に大小様々なぐい呑みを乗せて源さんが来ていた。
「今そこで山南君に声掛けたら、近藤さんにも声掛けてくるそうだよ。」
「…………はぁ」
もうすっかり怒る気が失せていた。副長室は馴染みの顔ぶれであふれていた。なんとなく笑えてきて、肩の力を抜いた。
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