短編集

□花見酒
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「…そうだな」
「そうこなくっちゃっ!」

ひょいと駆け出す総司の後ろを、上しか見てなかったくせに何処に目があるんだ…とブツブツ言いながらつづいた。

「すみません!お銚子2本お願いします」
「へえ、ただいま」

ちょこんと座り足をぷらぷらさせながら、またもや視線は上を向く。その顔がにこにことほころんでいる。

「そんなに花見、好きだったか?」

横に座って上を向いた。今日初めて見た…気がする。今が盛りか、一面薄紅色に染まっている。

「だって、土方さんが連れて来てくれたんですよ?嬉しいに決まってるじゃないですか!」
「…そうか」

柄にもなく照れる。ちょうど運ばれて来た酒を、手酌でグイとあおった。顔が赤いのは酒のせい、酒のせい…

「あ!乾杯しましょうよっ!ってか何で先に飲むんですか!?」
「何か文句あんのか?」
「も〜。殿様なんだからなぁ…」
「ガキがつべこべ吐かしてんじゃねぇや」

ひらり、ひらり、また一つ咲いては散る。目の前に広がる春景色を肴に差しつ差されつ。
暫しの休息、隣には愛しい人──

end
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