短編集

□約束 -タカラモノ-
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「疲れた〜!ねぇねぇ、少し休みませんか?こんなに良い天気なんですから、ゆっくり行きましょうよ!」

夏の少し前の晴れわたる空の下を惣次郎と歳三は、木刀と握り飯を持って歩いていた。

「おい…、まだ江戸を出たばかりじゃねぇか。」

道端の木の下に座り込んでにこにこ笑う惣次郎を呆れ顔で見下ろして盛大な溜め息をついた。
小柄で少女めいた面差しをしている目の前の少年の頭を軽く叩き

「ほれ、昼飯にゃまだ早いだろ。行くぞっ!」

と声を掛けると、振り返りもせずにさっさと歩き出した。

「え〜!少しだけで良いから休みましょうよぉ…」

年令より幼い仕草でぷぅと頬を膨らませ、ぶつぶつと文句を言ってはみたものの、聞こえているはずの歳三は背中を向けたまま足を止めずに、片手だけあげヒラヒラと動かし、「早く来い」と無言の圧力を掛けてくる。

「朝早かったしぃ、荷物あるしぃ、遠いしぃ…」

無駄と知りつつ思い付く限りの休みたい理由を並べて歳三の足を止めようと試みるが、当の本人はどこ吹く風で、歩みを止めるどころか逆に早める始末だ。

「も〜っ!」


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