短編集

□一枚の写真
1ページ/4ページ

「私は遠慮します」
「…怖いのか」

土方はニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべながら腕を組み、正面に正座する総司を眺めた。
写真を撮るのだと近藤が言い出したのは昨日の事だ。土方は、急にまた何を言い出したかと呆れた。近藤は西洋の新しい物に対して並々ならぬ興味を示す。新しい物便利な物は土方だって好きだし興味がある。例えば新式の鉄砲は確かに凄いと思うし、喉から手が出る程欲しい。だが写真に自分の姿を写し撮ると言うのは、局長命令だとしても今一つ乗り気になれなかった。

「土方さんこそ怖いんじゃないですか?」

大将一人を行かせると言うのも気が進まず、またもう一つ思う所があって、“護衛”と云う名目で総司を同行させようと呼びつけたものの、普段なら否と言わないのに何故か固辞され、先程から睨み合いになっている。

「一緒にするな。局長の留守の間に何かあったら困るだろ」
「黒谷に行かれる時はお二人で留守にするのに?」

目を細め、ちょいと顎を上げ挑むように見つめ返す。二人共留守なんて特に珍しい事ではない。二人の行き先はそれぞれで、黒谷だったり妾宅だったり遊郭だったり接待だったり見廻りだったりと、組み合わせは様々だが割りと頻繁に起こっている。今更それを盾にさ
れたところで“承知しました”と簡単に言う訳が無いのだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ