短編集

□願い…
1ページ/3ページ

行灯の橙の明かりがぼんやりと浮かぶ闇の中、ジジジ…と油の燃える音が流れ。くちゅりくちゅりと滑る水音がしんと静まる部屋に漂う。

「…………ん……」

闇に蠢めく影がある。揺れて、喘ぐその姿は白く浮かぶ。反り返る喉は溜飲を繰り返し、己を苛なむ影に縋がり付く。静かに伸ばされた細い腕は、汗ばむ強き腕に絡み取られ、褥に縫い取られていく。

「ぅん…もぅ…許し…て」

小さく開かれた口から切な気な赦しを乞う言葉が紡ぎ出された。不意に動きを止め、組み敷いた華奢な姿を見つめる。

「総司…」
「ぁぁ……土方さん…」

閉じられていた瞳がゆるりと開かれ、視線が結ばれその姿を捉える。心配そうに自分を見つめる様に、くすりと微笑み返した。

「きついか?」

汗で貼り付いた髪を手で梳きながらそっと尋ねた。総司の黒髪が夜の闇に溶けて広がり、自分を包み込むかのよう。

.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ