短編集
□願い…
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行灯の橙の明かりがぼんやりと浮かぶ闇の中、ジジジ…と油の燃える音が流れ。くちゅりくちゅりと滑る水音がしんと静まる部屋に漂う。
「…………ん……」
闇に蠢めく影がある。揺れて、喘ぐその姿は白く浮かぶ。反り返る喉は溜飲を繰り返し、己を苛なむ影に縋がり付く。静かに伸ばされた細い腕は、汗ばむ強き腕に絡み取られ、褥に縫い取られていく。
「ぅん…もぅ…許し…て」
小さく開かれた口から切な気な赦しを乞う言葉が紡ぎ出された。不意に動きを止め、組み敷いた華奢な姿を見つめる。
「総司…」
「ぁぁ……土方さん…」
閉じられていた瞳がゆるりと開かれ、視線が結ばれその姿を捉える。心配そうに自分を見つめる様に、くすりと微笑み返した。
「きついか?」
汗で貼り付いた髪を手で梳きながらそっと尋ねた。総司の黒髪が夜の闇に溶けて広がり、自分を包み込むかのよう。
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