短編集
□花守
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俺は武士になる───
誰に笑われても
例え一生叶わなくても
揺らぐ事は無いのだと
そう知ったから
ハナ-花 守-モリ
文久3年2月、将軍警護の為の浪士隊募集に参加した試衛館の面々は、一路京を目指し中山道を歩いていた。
「嬉しそうですね、土方さん」
旅装束に身を固め、足取り軽く進む土方の隣を歩きながら、総司は笑顔で尋ねた。上洛するにあたり元服し、名を惣次郎から総司に改めた。実のところ、まだ照れ臭い。
「当たり前だ!幕臣に取り立てられるかもしれないんだぜ!?これが喜ばずにいられっか」
「そうですね」
腰の刀が歩く度揺れて音を立てている。姉が持たせてくれた、父の形見だ。総司が浪士組に参加すると知り、急いで研ぎ屋に出して届けてくれたのだ。無事に帰って来るようにと、何度も何度も言っていた。
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