短編集

□花簪
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「後ろの正面、だぁれ!」
「ん〜…お幸ちゃん!」
「え〜!沖田はん、何でわかるんやろ?」
「そりゃ私は大人ですからね」

総司はそう言って笑った。非番の日、用事が無ければここで近所の子供達と遊んでいる事が多い。初めの頃こそ“壬生狼や!”と遠巻きにしていたが、今ではすっかり仲間と認識されている。それがとても居心地が良くて、ついつい遊び呆けてしまい、土方に苦い顔をされる事もしばしばだった。
日によって遊び方も様々に変わる。今日は珍しく女の子がたくさんで、先程まで手毬を突いたり、花いちもんめやかごめかごめをして、おとなしやかだ。

「あんなぁ、うち沖田はんとままごと遊びしたいんやけど…」
「ままごと…ですか?」

袖を引かれて、ふと振り返ってみれば、まだ4つ5つくらいの小さな女の子が、期待に満ちた目で総司を見つめていた。
あまりに熱心な瞳を向けられたのと、断る理由も無いので、頭を撫でてやりながら

「良いですよ。」

とにこやかに答えた。

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