短編集

□花見酒
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「本当だ〜っ!凄いですね!綺麗だなぁ…」

高瀬川に沿って続く桜並木をふらりふらりと歩いている。黒谷から帰る途中に人から聞いた桜の名所だ。土方としては賑々しい所よりも、人知れず静かに咲いている桜の方が風情があって良いと思うのだが、自分の前をはしゃいで歩いている総司を見ていると、「まぁ良いか」と言う気分になってくる。

「あ!船ですよ!乗せて貰えないかなぁ〜」
「資材運びの船だ。隅田の屋形船と一緒にすんな」
「そういえば江戸も咲いてるんですかね?懐かしいですね〜」
「そうだな…」


京でも有名な桜の名所というだけあって、人出も相当なものだ。総司が上を向いたままなので、土方が注意していないと、前を歩く人にぶつかってしまう。桜どころではなかった。

「土方さん。花見酒といきませんか?」

突然立ち止まるとくるりと振り返った。

「はぁ?」

道端の茶店の前に、赤い布をかけた腰掛けがあった。
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