短編

□秘密事
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 いつからだろう、γを好きだと自覚したのは。
 私はいつから、γが好きになったのか。
 野猿も太猿も好き。
 幻騎士も好きよ。うんん、ファミリーの皆が好き。
 でも、γは違う。
 γに抱く想いは、他の皆とは違うわ。
 きっとこれが恋なんだって、気づくのに時間はかからなかった。
 もっとも、この想いを告げてはいけないということも。

「姫さん、正直に言う。
 邪魔だ」

「別にいいじゃない」

 仕事をするγの横に座っているだけ。
 これくらいで集中力を欠く彼じゃないことは、私がよく知っている。

「あのなぁ!
 頭の上に訳わかわからんもの乗っけられたり!
 勝手にボックス兵器いじられたりしたら邪魔なんだっ」

 どこか楽しそうに怒るγ。
 本当にジッリョネロはボスと部下の境が薄い。
 一重に私が子供だからなのかもしれないけれど。
 というか、γに乗せたのは花冠で。
 いじったって言っても、装飾を眺めていただけ。
 そこまで怒らなくてもいい気がする。

「いいじゃない、別に」

 唇をとがらせて、そう言ってみれば。
 γはやっぱり、どこか楽しそうに「仕方ねぇな、うちのボスは」なんて呟く。
 ……ボス。
 私は、ボスで。γは、部下で。
 それ以前に、γはきっと亡くなった母のことが好きで。
 きっと、私なんて。

「……姫さん、秘密だがな」

 γはさぞ面白そうな顔をする。
 それに何かしら、と問えば。

「あんたのそんな、沈んだ顔を見てると特に思うんだ。
 笑ってりゃ、最高のいい女に育つだろうってな」

 そう言って、私の頭を撫でるγ。
 本心が知りたくて再び尋ねようにも、寒いから屋敷に戻れといわれてしまって。
 ……秘密だけどね、γ。
 私、あなたのことが好きな、最高のいい女になるわ。
 そして、あなたを振り向かせてみせるの。
 秘密事、だけどね。

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