長編 巫女と死神

□巫女と死神【09】
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『…』




ドクン

ドクン

ドクン





心臓が、体が、熱い。



ザッ

ザッ



私はゆっくりと湖に向かった。


「ナンダ?小娘。貴様モソコヘ入リタイノカ?」


『貴様も…ってことは…他にも、この中に誰か、入ってるの…?』



立ち止まり、途中で咳をしながら私は言った。


「此処ニ居タ、天女ダ。…残念ナ事二羽衣マデハ奪エナカッタガナ…」



それを聞いて私は再度進みだした。



湖の淵でしゃがみ込み、水に触れる。




パチ パチ




痛い…水が、チクチクする。



…これは…邪気の塊…?




私の触れている所からじわじわと色が戻っていく。



天女…と、羽衣…?



…羽衣って、天の羽衣…?


……かぐや姫のお話???!





『殺したの…?』
「殺サズニ、ズットソノ中ニ閉ジ込メテオルダケヨ…」



羽衣の場所を教えてもらえるまでな…


そう言ってホロウは笑った。



天の羽衣は、天女の物で凄い力がある。


傷を癒やしたり、身を守ったりする、特別なもの。



そうやってじいちゃんに言われたことがある。

かぐや姫の話の中でもそんな感じだったし…。



…助けてあげなきゃ。
天女さん…を、助けてあげなきゃ。



助けるまで自分の身が持つかは分からない。


でも、皆にアイツは見えていない。


浄化の力もきっと…



私は肘のあたりまでを水の中に入れた。



そしてそのまま、ゆっくりと入水する。



「ヒヒヒヒヒ…遂ニ諦メタカ…ヒヒ…ソノ中デ永遠ニ暮ラスガ良イ…」



私は腰のあたりまで入った。


私の周りだけ、水が透明だ。




そのままザプンと音を立てて私は湖の中に消える。



「ヒヒヒヒヒ…」



そんな声が聞こえる。



「あかりっ!」

修兵や乱菊さんがそう言っている。
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