春恋 今、隣に後藤さんがいる。 並んで座って、ペットボトルのお水を時折飲みながら、風に舞う桜の花びらを見上げている。 ・・・私と、二人きりで。 SPチーム+真壁さん+私、のお花見大会は桃田部長が公安の石神さんと後藤さんのお二人も連れてきての大所帯となり、どんちゃん騒ぎはカラオケ大会へと移行していっていた。 お手洗いに席を立った私は、日差しの暖かさに脱いだカーディガンを春風にさらわれてしまった。 そこに偶然居合わせた後藤さんがそれを取り戻してくれて・・・そのまま二人で桜を見ている。 ・・・色々端折ったけれど、そこは、まぁ・・・思い出すと心臓に悪いので。 私を探しに来たそらさんと真壁さんが去った後、再び二人で桜の根元に座った。 「…あぁ、気づかなくてすまん。これを」 先ほど座ったときに付いてしまった花びらや草を軽く払っていると、後藤さんはスーツの上着を脱いで私の足元に広げた。 「えっ!…いいですよ、汚れちゃいますから…」 「敷いていろ」 「でも…」 「いいから…あんたのスカートが汚れるより良い」 後藤さんはそういうと、広げた背広の横にどっかりと腰を下ろし、身体を幹に預けた。 仕方なく、私もそっと腰を下ろす。 「すみません…」 「気にするな」 ペットボトルを呷りながら空を見上げる後藤さんにつられて、私も顔を上げた。 雲ひとつ無い青天。 枝を伸ばした桜の白い花が青い空によく映える。 暖かな日差しも、白い花のレース越しに柔らかく降り注いでいた。 |