春風 宴もたけなわ、とでも言えばいいのか。 午前中から始まっていた桃田部長主催のSP班の花見は、昼を過ぎ、酒も進み、カラオケ大会が始まっていた。 うんざりしつつ上司を見ると、ちゃっかりマイクを握っている。 軽くめまいを覚えつつ、俺はこっそりと席を外した。 暖かな風に吹かれつつ、公園内をぶらつく。 どこもかしこも桜は満開で、その下には花見客が満杯だった。 人気の無い所はないものかと探していると、手洗い所の裏で彼女を見つけた。 総理のご令嬢、相川 ヒナ。 ご令嬢とは名ばかりの、なんとも庶民的な印象の女性だが、SPチームの面々はお姫様扱いといえるくらいに大事にしている。 確かに、ふんわりと微笑む姿は花のように愛らしい、と思う。 そんな彼女は常にSP達の誰かといて、楽しそうにしている。 そんな光景を目にするたびに、胸がざわざわと落ち着かない。 |