Dream

□デート
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滝つぼにそそぐ水音を聞いていると、少しずつ視界が歪んでいく。


目の前の景色が、いつか見たあの日の景色へと変わっていく奇妙な感覚。



周りの風景と、彼女に重なるあの人の影。



セピア色でも、モノクロでもなく、きちんと鮮やかなままで。

俺の記憶の中のあの人は、あの日から変わらないままの姿で微笑みかける。


昔はそれだけで熱いものが込み上げて来たけれど。

今はそれより、懐かしさが込み上げてくる。


それは、痛みや悲しみを忘れたということではなくて、引き出しにしまった写真を取り出して眺めたときの感覚のような。



気持ちの整理がついた、とはこういうことを言うのだろうか?


あの人の微笑みを心の引き出しにしまうように、俺はゆっくりと瞬きをした。

目を開けた瞬間、飛び込んでくる滝の音。

そして目の前の彼女の、不安を押し殺したような顔。



あぁ、ごめん。



そんな顔をさせたいわけじゃないのに。



そう思いながら口元を歪めると、彼女は溢れんばかりの笑顔になって俺の手を掴む。


「ここ、涼しくていいですね。今年は残暑も厳しいって言いますから…今度のお休みも、また滝に行きますか?」


にこにこと笑いながら次の休みの話をする彼女の手を、俺はぎゅっと握り返した。


「いや次の休みは…どこか、行ったことの無いところへ行こう」

「えっ?」

「……あんたと二人で、新しい場所に行ってみたい」


俺の言葉に目を真ん丸くする彼女を見て、思わずふっと笑みがこぼれる。



これからは、二人の未来を見に行こう。



俺は彼女の手を引いて、ゆっくりと歩き出した。





END



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