狼狽が顔に出ていないだろうか。 迎えに出向き、目に飛び込んできた彼女の姿は…一瞬で俺の心を乱した。 平静を装うのは慣れているはずなのに、彼女の前だと上手くいかない気がしてならない。 自分の上着にその小さな身体を隠して、大人しく助手席に座る彼女の表情は硬く、元々女性に疎い自分にはその胸のうちを推し量ることすら出来ないのがもどかしい。 「とりあえず…私の部屋が一番近いのでそこへ向かいますね」 「えっ!?…いえ、あの、私の家までで大丈夫ですから…ご迷惑でしょうし」 「いや、早く身体を温めた方がいいですよ。この時期に風邪を引くと厄介ですから」 慌てて手を振る彼女に微笑みかけ、矢継ぎ早に言葉を告げる。 言い返す言葉が出てこないのか、口をもぞもぞ動かしながらも彼女は押し黙った。 「どうぞ」 「…お邪魔します」 我ながら生活感の希薄な部屋に、彼女を招き入れる。 この部屋に女性を迎える日が来るとは思わなかったが。 「…脱いだ服はこの乾燥機へ入れてください。タオルはこれをどうぞ…ドライヤーもそこにありますので自由に使ってください」 「あ…はい。ありがとうございます」 小さくお辞儀をしながらタオルを受け取る彼女を残して、俺は脱衣所を出た。 キッチンで飲み物を用意していると、滅多に客など来ない部屋に温もりが加えられたような気がした。 この部屋には珍しい自分以外の誰かの気配。 ……彼女の気配。 それを感じて浮き足立っていることは、乱れたままの鼓動が嫌というほど教えてくれていた。 |