にゃんこ・ザ・どりーむ 冷え込みの厳しくなってきた朝、布団の温もりと言うのは離れがたい代物で。 不快な携帯のアラームを手探りで止め、隙間から忍び込んできた外気の寒さに身体を丸めて深く布団に潜り直す。 ううぅー……さむいー… ベッドの中でもぞもぞと身体を動かしていると、なんだか違和感を感じた。 ゆっくり身体を起こそうとしてみるが……起きられない。 あ、あれ…?? うーん…布団が………重い? 這うようにして掛け布団から抜け出した私は、そのままそこで固まってしまった。 ………え? 枕にしがみついている右腕と左腕は白いつやつやの毛に包まれ、手のひらには……ぷにぷにの肉球。 そのぷにぷにで顔を触ってみれば、頬から伸びた硬いヒゲがあることに気づく。 全身を見回してみても、その全てが腕と同じ白い毛に覆われて、更にはお尻の先に今まで感じたことの無い神経が通っている。 振り返りながら動かしてみると、ぱふんぱふんと布団を鳴らしながら揺れる……長い尻尾。 ………ええええ??? その尻尾を追いかけてぐるぐると意味もなくその場を回ってみるが、混乱する頭は自分の現在の姿を認めようとしてくれない。 「ニャァァァーーー!!??」 が、その口から出た叫びはやはり、猫のそれだった。 ベッドから飛び降りると、すぐ脇にある姿見に自分の身体を写してみる。 ど、どこからどう見ても…猫……!? 目の前の鏡の中には見知った自分の姿は無く、白く尾の長い一匹の猫がたたずんでいた。 ひとしきり鏡の中の猫を見つめ、どうやら本当にこれが今の自分らしいと諦めに似た確認をした後、呆然としつつ部屋を見渡した。 住み慣れたはずの自室は、見たことの無いジャングルへとその姿を変えていた。 目線の低くなった私には、ベッドもテーブルも巨大な岩山。 軽くなった体は、とんっ、とテーブルの上に飛び乗ることは出来るが、降りるのは少し怖い。 しばらくそうして動き回った後、一人で部屋にいても何も出来ない私は、何とか窓をこじ開けて外へと飛び出した。 とりあえず……あそこへ行けば、皆がいるはず!! 私は僅かな希望を胸に、走り出したのだった。 |