恋人の真実 「私、前から不思議に思ってることがあるんだけど」 ヒナが眉間に皺を寄せ、声のトーンを落として囁いた。 大学は休みだが、恋人である桂木は総理の公務に従い仕事中のため、暇をもてあましたヒナはSPルームを訪れていた。 そこにいたのは官邸居残り組のそらと海司。 「なになに?」 「なんだよ、いきなり」 ヒナの口調に、二人ともつられてひそひそ声になる。 他に誰もいないと分かっていても、内緒話のにおいがすれば自然と顔を寄せ合ってしまう。 「桂木さんって…怪我の治りがやけに早いような気がするんだけど… あれって、普通なのかな?」 「あぁ…それは俺も思ってた」 「でしょー!?」 ヒナの疑問に同意する海司。 賛同を得たヒナは嬉しそうに先を続ける。 「テロリストに捕まった時だって、あんなにボコボコにされてたのに、普通にお父さんとお酒飲んだりしてたし…その後銃で撃たれた時だって、次の日にはピンピンしてたし。いくら頑丈って言ったっておかしいと思うんだけど…」 「まぁ、致命傷は避けてるってのはあるんだろうけど…それにしたって回復早いなぁと思ってたんだよ」 「だよねぇ…」 「前にも護衛対象かばって、突っ込んできた車に思いっきり吹っ飛ばされたけど、翌日には現場に復帰してたし…」 「えぇ!?」 「あん時はさすがに骨折れて入院するだろうと思ってたのに、かすり傷と打撲で済んだって本人は言っててさ」 体のつくりが人と違うのかもな、と海司が笑いながら呟く。 と、ここまで黙っていたそらが重たそうに口を開いた。 「そのこと、なんだけどさ…」 「え?」 「はい?」 普段のそらから考えられない、か細い囁きとためらいの表情に、ヒナと海司は振り向いた後で思わず真顔になってしまう。 「な、なんですか?」 「うん、班長って実は…」 もったいぶったそらの口調に、二人はゴクリと息を呑み、真剣に見つめる。 「サイボーグなんだ」 |