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□トリップ
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目を開けると、知らない天井がそこにあった。
「…そうか、
こっちに来てたんだっけか」
夢オチを期待してたんだが…、残念ながら現実のようだ。
「さてと…」
ベッドから起き、
俺は昨日コンビニで買ってきたパンを台所から持ってきて机に置き、視界に入った雷門の制服に着替えた。
「うっわ…」
洗面台の鏡に移っている自分を見たら、思わずそんな声が出てしまった。
なんか…
コスプレでもしてる気分だ。
俺は複雑な気持ちのまま身支度を整え、最近買った鞄を持ってアパートを出た。
雷門中へ初登校だ。
封筒に書いてあった内容には、転校って事になってたが。
両親は…居ないらしい。
2人とも事故で死亡。
親戚が引き取ってくれたという事らしいが、ぶっちゃけ遺産が目当てな気がする…。
って、随分ドロドロだな!
つか死んだの俺じゃん。
どうなってんだ本当に!!
内心で叫びつつ、気づけばもう雷門中は目の前だった。
…とにかく職員室行こう。
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あー…、
やっぱりというか…
「転校生の秋月蒼夜君だ。
みんな仲良くするように」
こうなるんだな。
「……よろしく」
俺はなるべく見覚えのある顔を見ないようにして呟いた。
「じゃ、
空いてる席に座って」
円堂君と席近いです先生。
メッチャこっち見てます。
ある意味コワイです。
俺は絶対に目を合わせないようにしながら席に座った。
あ。
「………」
豪炎寺と目があった。
慌てて視線をそらすと、今度は別方向から視線を感じた。
絶対あいつだ。円堂だ。
HR終わったらおしまいだぞ。
きっとかなりの確率で話しかけられる。
「…ハァ…」
俺は憂鬱な気分になりつつも、対策を考えていた。
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ほら来た。
「なぁなぁなぁ!
昨日、河川敷に居たよな!?」
あぁーうるせぇぇぇ…。
予想ついてたけど。
しかし、
円堂は結構好きなキャラだ。
ここは極力フレンドリーに…
「…そうだけど、何?」
できません。口下手なんで。
あと声低くてすみません。
怒ってる訳じゃないんです。
「じゃあさ!秋月もサッカーが好きなのか?」
は?
こいつ…まったく気にしてないどころか勧誘する気満々だ。
「…なんでそうなる」
思わず俺がそう聞くと、
円堂は笑顔で、
「なんかそんな気がしてさ!
サッカー部入んないか?」
勘ですか。流石キャプテン。
キラキラした顔でこちらを見る円堂を呆れた目で見つつ、俺は内心で笑っていた。
何故なら、
円堂の勘は当たっている。
俺は、サッカーが好きだ。
けど、
「悪いが、入る気はないな」
心の整理がまだつかない。
「そっか…」
あからさまにしょんぼりとする円堂に内心で苦笑しつつ、俺は席を立った。
「秋月!!
入る気になったらいつでも
言ってくれよ!」
教室を出ようとした瞬間、背後から声をかけられ、俺は本当に苦笑してしまった。
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放課後、俺はどうしても気持ちを抑えられずに、サッカー部へ向かっていた。
なるべく部員達に見つからないように移動する。
見つかったら勧誘入部という、フラグがたってしまう可能性があるからな…。
それだけは避けたい。
「…ふぅ」
そしてなんとか誰にも会わずに部室に辿りつく事ができた。
相変わらずオンボロだな…。
そう思いながらそろそろと部室の裏に隠れる。
中では、作戦会議のような事をしているようだ。
豪炎寺は居るみたいだから…、次の試合相手か?いや、
まだ何かあったような…。
その時、ガラッと部室の扉が
開いた音がした。
誰か来たのか?
ああ、もしかして…
「音無春菜…か」
思わず、ポツリと呟く。
帝国に居る、鬼道有人の妹。
似てねぇなと、後で思った。
となると次の試合相手は…、
「…尾刈斗中か」
騒がしくなってきた部室を後にして、俺は呟いた。
ああ、
無性にサッカーがやりたい。
唐突に、しかし、確かな想いが俺の中でうまれた。
けど、
必殺技とか使えないしな…。
練習するか?
「…練習…」
校門まで来た所で、
俺はたった今思いついた事を
口に出していた。
河川敷…あそこなら。
俺はいてもたっても居られなくなり、急いで家に帰った。