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□トリップ
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サッカーの大会前で、俺は少しテンションが上がっていたのかもしれない。
チームの友達とサッカーの練習をしに行った。
友達が赤信号を平気で渡り、
俺もその後に続いた。
そして、
近づいて来るトラックに気づいた時には、もう遅かった。
視界、意識、辺りの喧騒、そのすべてが霞んでいく。
『人がひかれたぞ…!』
『救急車を早く…!!』
『蒼夜…!嘘だろ…!?
蒼夜…!蒼夜…!!』
友達の声が遠く聞こえる。
−ああ、死ぬんだ俺…。
そう思った瞬間、
何も分からなくなった。
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ヤバい。
確かにサッカーは好きだ。
死ぬ間際は大会前だった。
けど、
まさかこんな事になるなんて
思いもしなかった。
マジどうしよう。
なんでだ?なんで俺…、
「よーし!パス行くぞー!!」
「おう!!」
「染岡!こっちだ!」
こんな所に居るんだよ…!?
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最悪だ。どうしよう。
「こっちこっちー!」
「行きますよっ!」
「おい少林!パスだパス!」
「来い染岡!」
マックスに少林、それに染岡や円堂達…。
どうやら河川敷で特訓中のようだ。
豪炎寺は居ない。
一体、物語のどの辺なのか?
しかし、ここで特訓をしているのを見ると、帝国と試合はしたのだろう。
でなければあんなに必死に特訓はしない。
「…楽しそうだな…」
俺は思わずそう呟いた。
「あなた誰?」
「っ!?」
声に驚いて後ろを振り返ると、思った通り、そこには雷門夏未が居た。
夏未は不審なものを見るような目でこちらを見ている。
仕方ない。ここは退くか。
俺は無言で夏未に背を向けて、歩き出した。
「ちょっと!待ちなさい!!」
待てません。
俺は若干足を速めて、逃げるように歩き去った。
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「何なのかしら今の…」
「どうしたんだ?」
「あら円堂君。
何でもないの。ただ…」
「誰だ?あいつ…」
「あまり見ない人っス」
「もしかしたら誰かの知り合いなんじゃないか?」
「俺は違うけど…」
「「俺も」」
「俺もっス!」
「僕もですよ」
「じゃあ、
一体誰なのかしら…?」
夏未の呟きに、
雷門全員が首を傾げた。
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「これからどうしよ…」
まさか、
イナヅマイレブンの世界に来る事になるとは思わなかった。
ゲームもやったし、
アニメも見た。
けど、
こんな事になるなんて…。
住宅街を歩きながら、俺は今後の事について考えた。
金はないし、住む場所とか一体どうすれば…ん?
俺はふと違和感を覚えた。
「…なんだこれ」
何故かズボンのポケットの中に鍵が入っていた。
これは…どこの鍵だ?
そう思った瞬間、突然ある場所が頭に浮かんだ。
住宅街の近くにある、
古いアパート。
「…え…?」
なんで、今思いだしたんだ?
…思いだした?
「…おかしい」
どうやら、この鍵はアパートの鍵らしいが…。
なんで俺がこの鍵を持っているのかが謎だった。
しかも、最初っから知ってた事のように思いだしたし。
…頭がこんがらがってきた。
とにかく、
「…行ってみるか」
俺の家らしい場所に。
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アパートの二階、202号室。
ここが俺の家…のようだ。
「お邪魔します…?」
俺は語尾に疑問符をつけつつ、鍵を開け、部屋に入った。
外はもう暗くなっていたので、俺はスイッチを手探りで探し、明かりをつけた。
「おお…」
部屋には机と椅子、シンプルなベッドなど、生活に必要な物が揃っていた。
「これはまた…
ん?なんだこれ?」
俺はふと見つけた、机に置いてある服を手に取ってみた。
「…おい、まさかこれ…」
それは、どっからどうみても
雷門中の制服だった。
「嘘だろ…?
雷門に通えって事かよ…」
いやでも金ないし…と、思ったその時、広げた制服から何かが落ちた。
「…これは…」
落ちたのは、雷門中学校案内と書かれた封筒と、預金表。
封筒を一旦机に置き、
俺は嫌な予感を感じつつ預金表を見た。
そこに書いてあったのは、高校卒業まで充分暮らせるくらいの金額だった。
「………嘘だろ」
逃げ道は、もうなかった。