□銀魂
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1年とちょっと。

鬼の副長と呼ばれる男、土方十四郎。
これは、その男の傍に居続けた時間。
そして、これからも増え続ける時間。




「なぁ、なまえ。」

「ん?」

ある日、あたしの部屋で寛いでいたトシが何の前触れもなく言った。

「俺の仕事はさぁ、いつ命落としても不思議じゃねーんだよ。」

「うん、わかってるよ?」

いつにもなく、真剣な表情で呟く言葉。
それは初めから知っていたことで、今更口にする程でもないものだった。

「それに…お前が俺の女だって知れたら、お前にまで危険が及ぶかも知れねーんだ。」

それは攘夷浪士に限らずとも、真撰組に恨みを持つ輩に人質とされる可能性があるということ。
だがそれも、なまえにとっては覚悟の上のこと。

「うん、でもトシが全力で守ってくれるんでしょ?」

少し冗談めかして笑って言えば、
「あぁ…。」
と真剣に返される。

「トシ…?」

いつもと違う様子に、あたしは不安になり、そっとトシに近寄って、顔を覗き込んだ。

熱を帯びた目。
その目はあたしを捕らえて離さなかった。

「なまえ。」

ポツリと小さく名前を呼べば、その吐息に混じった微かな煙草のにおいがあたしの鼻をくすぐる。

「俺と一緒だと危険だって、わかってても傍に居てくれるか?」

そう呟いたトシの目は、先程と変わりなく熱を帯びたままだったが、どこか不安の色が見え隠れしていた。

堪らなくなり、あたしはトシに抱きつき、その肩に顔を埋めた。

「そんなの、当たり前じゃない。あたしはずっとトシの傍にいる!」

「そうか…。」

詰めていた息を吐き出すかの様に言うと、抱きついたあたしの背中に手を回し、片方の手で頭を撫でた。
その手は少し、震えているようにも感じた。


「なまえ…。」

もう一度、トシがあたしの名を呼ぶ。
低く掠れた声が、今度はあたしの耳をくすぐった。
抱きしめる腕に力を込めたかと思えば、あたしの身を離し、目を合わせる。


「俺と…結婚してくれ。」

熱を帯びたその目に、もう不安の色はなく、真っ直ぐにあたしを見つめていた。


あたしが返事代わりのキスをすれば、トシはそれを受け止め、微笑んでくれた。


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