小説

□犯人
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始まりは一通のメールだった。








『木戸音流、12月5日生まれ。
大家族の長女、両親は現在海外で音楽活動中。
桜水学園高等部生徒会会計。』











気味が悪かったが、前に私はストーカーの被害にも合っているのでその一環だと思った。

着信拒否をして私はそのメールを忘れようとした。







・・・忘れようと、したのだ。








その日から毎日毎日、違う内容、その日にあったこと全て全て記されたメールが届く。


着信拒否しても着信拒否しても何度も何度もメールは来る。



そしてある日それは変わった。








『私の計画に参加しろ』









と。
私はそのストーカーが気持ちが悪くて仕方がなかったからすぐにそのメールも着信拒否した。



なのにまた、相変わらずまるで日常の一部になってしまったかのようにそれはきた。











『桜水学園の理事長を人質にとっている』

『理事長の命が惜しければ私の計画に参加しろ』

『私は、ある一人の少女を愛している。』

『狂おしいほどに』

『だから私は少女に存在を示そうと思う』

『私の計画に参加しろ』

『少女の反応の全てが私の生きる糧となる』

『本気だ。』

『その本気を示そうと思う。』

『朝、ウサギ小屋に来い』

『私は待っている、一人の少女が狂うのを。一人の少女が私に気づくのを。

そのために手段など選ばない。
只、そのための道になるアスファルトなど簡単に踏み潰すだろう。理事長も、君も』








私は従うしかなかった。
たとえ理事長が顔を見たこともない他人でも私は最低限理事長に関わっていたし、
そしてなによりウサギ。





簡単に命なんか刈り取れる。
理事長の体もこのウサギのように、ずたずたに引き裂かれてゴミと化す。

ただの、血肉になる。









「私、間違ってましたよね」

「・・・。」

「声が変えられるからこの計画に参加させられたとは言え、自分の宝物の声を傷つけた。
それに、先輩達を騙してしまったしあんな放送をしてしまった。」

「・・・あのさぁ」









私は、ゴスッと壁を殴る。
下を向いて、ただ下を向いて。







目の前の弱い弱い後輩に言う。












「あんたの声、私好きだよ。」

「へ・・・」

「だから、それを利用した奴が許せない・・・」










私は放送開始のボタンを押す。
あーあー、と発声練習。












「どーもー孤高(笑)の問題児月陽ナガルっす。みんな聞こえてるー?スナオ聞こえてるならメールよこせー。

あ、聞こえてるみたいなんで一言ー。」










ふざけた放送に声色。木戸は呆気にとられていた。

そして一呼吸置いて大きく息を吸った。









「あんま私のことなめてんじゃねぇぞ!!
愛しい?知らねぇよ!変人はマジナとエミとサトシで十分だ!

喧嘩売ったな?私に喧嘩売ったな!?後悔させてやっから逃げんじゃねぇぞ!!」










大きく目を見開いて。
ボロボロと涙を流す木戸は本当に被害者で。










「あ、ちなみにブレーカーつけるのめんどいんで闇鍋的なノリで立食会しちゃってください!
以上!先生、反省文は三行で勘弁してくださいね!!」









あーあ、また書かなきゃならない反省文が増えると思いつつ放送スイッチを切る。











「なんつーか、木戸さん。
犯人は私がぶっ飛ばすからさ。安心して日常に戻ってね。

お疲れ様、よく頑張ったよ。」










私は木戸の頭を撫でる。
そして放送室を後にしようとした。







犯人はまだ見つかっていないが、まぁいい。今からゆっくり探して思う存分殴ってやろう。
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