小説

□犯人
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私は全力で明かりのない廊下を駆けた。
夜ということもあってか窓からは月明かりが廊下を照らす程度である。


だけど、私には関係ない。
放送室までの道筋は完璧に覚えているし、目を閉じてでも走って放送室へ行けるだろう。


ブレーカーを落とされているので明かりのつけようのない廊下を私は勘だけでひた走る。

もう、三メートルで右!!と体に言い聞かせて私は記憶の中の廊下を走った。

階段を駆け登って、左、その突き当たりが放送室!!








私は無我夢中に放送室のドアノブを回す。
普段は鍵がかかっているそこはいとも簡単に開いた。

そして今も放送が聞こえているからと電気をつけてみる。

ぱっと明かりがついて、視界が眩む。
ぴたりと放送が止む。











「やっと、見つけてくれましたね。」













聞き覚えのある優しい声。
私はまさかと思い目を恐る恐る開けた。







そこには、微笑んでいる木戸音流がいた。















「やっぱり。」

「あはは、気づいてました?」

「暗闇走ってて気づいたの。

もしかしたら、犯人は声を換えられるじゃないのかって。」









そしたら、あんた。
木戸音流にたどり着いたのとナガルは言う。
お手上げだと言うかのように音流はため息。





警告のときと、声が変わっていた犯人。
こんな器用な真似できる人物なんて一人しかいないだろう。








「木戸音流。あんた、音楽の世界でも有名な木戸先生の娘だね?」

「やっぱり、月陽っていう母の教え子は先輩だったんですか。
まぁ、予想通りですよ。」

「なに?あんたなにがしたかったの?」









私は中に入ってドアを閉めた。
そして放送機器を撫でる。










「廊下の声。あれはレコーダーで録音した音。私たちは人じゃないと思いこまされていた。
当たり前、人じゃなかったんだもの。

次にウサギ。あれは、木戸が殺したのかな?」

「・・・違います。




私はウサギを殺してなんかいない。」









ならどうしてウサギは死んだと彼女に問う前にある一つの考えが浮かび上がってきた。







まさか、と思い私は記憶を整理する。








殺されたウサギ、木戸の怯えよう、録音されたレコーダー。
待て、待て。












「・・・まさか、あんた脅されてこんなことやってたの?!」












あの、木戸の怯えよう。
演技なんかに見えなかった。
当たり前だ、木戸は犯人に呼ばれてウサギ小屋まで来たのだから!!














「始まりは、一通のメールでした。」










淡々と明かされる予想を上回る真実に私はただただ驚愕するしかできなかった。
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