小説
□本気
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私たちは、朝ウサギ小屋に足を運んで愕然とした。
目に映るの赤と、ぐちょぐちょしたウサギの腸。
鼻を劈くにおいは、喧嘩をしたときの不良と同じ鉄のにおい、血のにおい。
眼前でバラバラになったウサギを見て私はギリッと歯を鳴らす。
スナオは口を押さえて眉間に思いっきりしわをよせる。
「ひでぇな・・・」
スナオがぼそっとつぶやいた。
私はそっとしゃがみこんでウサギの死体に触れる。
まだ、生暖かい。
「・・・殺されたばっかりっぽいね。血も変色してないし・・・。」
ウサギが、殺された。
「なに考えてやがんだ・・・。」
「・・・さぁ?ここまでして私達を立食会に出したくない理由ってー・・・」
私はうさぎに手を合わせる。
ごめんよ、私たちが強情なせいで殺されちゃって。絶対に仇はとるから。
「木戸さん、大丈夫?」
私とスナオの後ろには小刻みにカタカタと震える高等部2年の木戸がいた。
うさぎの死体を目の前でみたんだ、そうなるのがあたりまえだろう。
「・・・大丈夫、です。あの・・・ナガル先輩、スナオ先輩・・・立食会って・・・私たちが企画した立食会がどうかなさいました?」
やっとつむぎだした言葉に続いて、彼女の責任感を感じさせる言葉。
ああ、そうか彼女は生徒会だったかな。
「んにゃ、生徒会は関係ねぇよ。ただ、言うなら・・・見えない敵は、本気で仕掛けてきてるってことくらいかね。」
「・・・見えない敵?」
「スナオ!」
私はスナオをにらみつける。
木戸まで巻き込んだらどうすんだ、とアイコンタクトするとスナオはため息。
「ごめん、なんでもねぇわ。うさぎのことは木戸さんから教師どもに報告してくんね?
俺たちだと信用してもらえねぇしさ」
「え・・・あ、はい。
あ、あの!立食会に・・・出席、しますよね?」
ああ、楽しみにしてるからと笑うと木戸はとても複雑そうに、でもそれを私たちに感づかれないように笑った。
木戸と別れた後、教室に向かう廊下を歩いている間。
「・・・おかしかったな。」
「・・・そうだね。なにも知らないフリしながら、絶対に木戸はなにか知ってた。」
あの時、最後に木戸が言った言葉。
"立食会に出席しますよね?"
私たちは誰一人にも、出席の有無を言っていない。
それに、木戸の言葉。
出席しますよね?
それは生徒会としての確認にしてはとても不自由で不透明。
ここの学園のイベントにはなにがあろうと強制出席、強制参加。
それなのにわざわざ聞く必要があるのか?いや、ない。
それに、言い換えてしまえば木戸の言葉は『立食会に出ちゃうんですか?』に近かった。
「生徒会ぐるみの、計画か?」
「なら、マジナはどう理由つけんのさ。
それにマジナと私が来た警告。悪戯にしては悪趣味すぎる。」
なら、木戸はなにを知っている?
私の聞いた警告をたまたま聞いてしまった人物なのか?
いや、あの時間帯は生徒会は会議中のはずだ。
・・・そもそも、生徒会が犯人なら。
なら、どうして。
ウサギは殺された?