小説
□四月、こんなに留年したいのは初めてだ。
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長く長く続いていく廊下。
二人は肩を並べて歩いていた。
「・・・また、同じクラスだね・・・」
「しかも、隣の席だな」
階段を駆け上り、ため息をつく。
二人とも、諦めきっていた。いや、覚悟はしていた。
していたけれど、裏切られた期待のショックに立ち直れない。
「私たちって、問題児なのかな・・・・?」
「だから教卓のまん前二人して陣どってんだろ?」
去年もやった気がする会話をする。ため息が重なり、廊下に響いて消えていく。
空気が重い。
今まで目を背けていた現実をつきつけられた。
うちの学校は担当先生が勝手に席を決めて、そこから順に出席番号を打つ。
だから名字なんて関係ない、よって私たちは毎年教卓のまん前を二人して陣どっている。
気がつけば目の前にドア、3−Bの文字。
「あけるよ」
「あぁ。」
流はドアを開けて一歩中に入って一歩後ずさってドアを閉めた。
そして今年の桜顔負けの満面の笑みで言った。
「私、留年する。」
「ちょ、ま、何を見たwwww」
幼馴染の無理やりすぎる笑顔を見て、順もドアを開ける。
一歩中に入って一歩後ずさってドアを閉めた。
フッ・・・と笑う順。そして流に告げた。
「俺も一緒にいいか?」
「わかった・・・覚悟はある?」
「あぁ、あるさ。もちろん。」
決意の瞳。流はじぃ・・・とその瞳をみて、笑みをこぼす。
「本気、みたいね。わかったやりましょう。」
「ありがとう。」
順は流に微笑んだ。流は目を合わさずに、遠い目をする。
「もう、戻れない」
「・・・知ってるさ」
どこの戦物のシーンだよ?!というツッコミはなく、廊下に虚しさだけがこだまする。
いつもならツッコミがいるのに・・・。
「私右側の窓!!スナオ左側の窓!!」
「おうよ!!せーのっ!で割るぞ!!」
「せーのっ!の"の"で割るの?!」
「せーのっ!の"!!"だ!!」
「オ−ゥケェイ!いっくぜぇスナオ!!」
「おうよ!!すぇっのおおおおおおおおお「なにやってんだお前ら」
大きく振りかぶって窓を割ろうとしていたカバンは勢いを殺がれ、フッ飛びお互いの間逆に落ちた。
「「・・・。」」
無言。カバンが落ちた余韻。
先生はカバンを持ち上げて教室に放り込む。
そして二人に言った。
「はやく中に入れ」
「お、横暴だ!!」
「職権乱用だ!!」
「なんとでも言え、問題児」
「あーあ!!それ言っちゃった!!」
「先生なんか呪われろー!!」
「小学生かおまえら。」
あれほど冷たい目を生まれて初めて二人は見た。
あぁ、先生までも敵。
同じクラスの奴にも敵がいる。
誰か、私に安らぎをください。