小説

□四月、こんなに留年したいのは初めてだ。
1ページ/3ページ

長く長く続いていく廊下。

二人は肩を並べて歩いていた。








「・・・また、同じクラスだね・・・」

「しかも、隣の席だな」










階段を駆け上り、ため息をつく。









二人とも、諦めきっていた。いや、覚悟はしていた。

していたけれど、裏切られた期待のショックに立ち直れない。










「私たちって、問題児なのかな・・・・?」

「だから教卓のまん前二人して陣どってんだろ?」







去年もやった気がする会話をする。ため息が重なり、廊下に響いて消えていく。

空気が重い。

今まで目を背けていた現実をつきつけられた。

うちの学校は担当先生が勝手に席を決めて、そこから順に出席番号を打つ。
だから名字なんて関係ない、よって私たちは毎年教卓のまん前を二人して陣どっている。







気がつけば目の前にドア、3−Bの文字。









「あけるよ」

「あぁ。」









流はドアを開けて一歩中に入って一歩後ずさってドアを閉めた。












そして今年の桜顔負けの満面の笑みで言った。








「私、留年する。」

「ちょ、ま、何を見たwwww」










幼馴染の無理やりすぎる笑顔を見て、順もドアを開ける。









一歩中に入って一歩後ずさってドアを閉めた。










フッ・・・と笑う順。そして流に告げた。











「俺も一緒にいいか?」

「わかった・・・覚悟はある?」

「あぁ、あるさ。もちろん。」









決意の瞳。流はじぃ・・・とその瞳をみて、笑みをこぼす。









「本気、みたいね。わかったやりましょう。」

「ありがとう。」











順は流に微笑んだ。流は目を合わさずに、遠い目をする。







「もう、戻れない」

「・・・知ってるさ」











どこの戦物のシーンだよ?!というツッコミはなく、廊下に虚しさだけがこだまする。

いつもならツッコミがいるのに・・・。











「私右側の窓!!スナオ左側の窓!!」

「おうよ!!せーのっ!で割るぞ!!」

「せーのっ!の"の"で割るの?!」

「せーのっ!の"!!"だ!!」

「オ−ゥケェイ!いっくぜぇスナオ!!」

「おうよ!!すぇっのおおおおおおおおお「なにやってんだお前ら」









大きく振りかぶって窓を割ろうとしていたカバンは勢いを殺がれ、フッ飛びお互いの間逆に落ちた。












「「・・・。」」













無言。カバンが落ちた余韻。











先生はカバンを持ち上げて教室に放り込む。

そして二人に言った。











「はやく中に入れ」

「お、横暴だ!!」

「職権乱用だ!!」

「なんとでも言え、問題児」

「あーあ!!それ言っちゃった!!」

「先生なんか呪われろー!!」

「小学生かおまえら。」










あれほど冷たい目を生まれて初めて二人は見た。






あぁ、先生までも敵。
同じクラスの奴にも敵がいる。









誰か、私に安らぎをください。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ