小説

□僕と君の卒業式
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「お前の心は鉄か!!銅か!!!マグネシウムかああああああああ!!!」

「あーもううるさい黙れ!」




うざったい二時間が終わり、私は教室に戻ろうとしていた。
すると目を赤く腫上らせた友達のミヤビが泣きながら泣いていない私を非難する。

私を指差して、バーカバーカ!と叫ぶ姿は通行人からすればあまりいいものではない。

私はため息をついてミヤビにハンカチを押し付ける。
ミヤビはそれで涙をぬぐう。




「なんで卒業式で泣くのかがわからん。」

「いやいや!みんなとお別れだよ?!」




私たちは中学生。確かに受験だって経験したし、今からそれぞれが色んな道を歩いていく。

多くのものが親しいものを別れる儀式。それが卒業式なんだ。
時の流れに抗おうなんてバカなことはしないし、そんなことをしても意味はない。




涙を流すというのは、そういうことだ。






「あ、そっか流って順くんと同じ高校・・・推薦で通ってるんだっけ。」

「まー・・・順がいれば三年間はバカやれるからね。」






別にミヤビと離れるのが平気なわけじゃない。
本当は、もっと遊んでおくんだったとか。
もっともっとふざけておくんだったとか。
でもそれはしょうがないことだから。





「あんたはデザインがんばんなさい」

「うわっやめてよ泣くじゃんかぁ・・・」

「そんなことで泣いてんなよ・・・」




また、大きな瞳を潤ませて。
その目いっぱいに涙を浮かべて。
そして私に抱きついた。



ああ、もうと思うともぞもぞとミヤビが動く。そしてつぶやいているんだ。

離れたくないって。
ずっと一緒にいたいって。





「あーもう。ほら、お泣きっ!」




ぎゅっと抱きしめた彼女はかすかに震えていた。
こんなんじゃ、人生の分かれ目が来るたびに泣くよこいつ。




私たちが廊下でいるせいもあって、後ろからいろいろ冷やかされたりした。
私は泣いてないがな。





「なに百合ってんの二人・・・?きめぇ・・・」





聞き覚えのある声を聴いて私は後ろを見る。
すると片手をポケットにつっこんだ順がいた。





「あー、ミヤビすっげぇ泣いてんじゃん」

「す、順くんだって目ぇ赤いじゃない・・・」



確かに順の目は軽く赤い。
どうしたんだ、珍しく泣いたのか?まさか。



「これ?さっき高橋に『なんでてめぇ泣いてねぇんだ!お前の心は鋏か!!』って言われて目潰しされた」

「やっぱりな。」






正直鋏はどうかと思うぞ高橋。
私はミヤビを抱きしめる腕を緩めて軽くミヤビの体を押す。
するとミヤビが意外とすんなり離れてくれた。






「じゃ、私は教室戻ってるから流と順くんはごゆっくり」

「コラ待てなんの誤解をしている」





私が走って追いかけようとしたが相手は陸上部、追いつくはずがない。
私はミヤビを追うのを諦めて順の隣に立つ。





「藤原はなんにもかわんねーな」

「あの子はもとが優しいからね」





くだらない会話を繰り返して。
たまには怒らせたり怒ったり。





「私たち高校かわらないもんねー」

「だよなー。ま、またバカやって笑ってようぜ」







バカやって笑っていよう。
自分らしく生きていこう。

ミヤビみたいに泣いてもいいよ。
でも、立ち止まらないで。


私のことを忘れてよなんて、私にも怖くて言えやしないけど。


なら、たまに会っていろいろな話をしよう。

なにも臆することはない。
だってずっとずっと親友だから。




なにかあったら頼ってくれればいいよ。
なにかあったらまた泣いていいよ。

でも、違う場所でがんばって。



私も頑張って生きていくから。


だから、『サヨナラ』なんかいらないよ。






「教室行こうかー。」

「あのバカクラスとも最後だなー。」




ふと窓の外を見ると満開の桜が咲き誇っている。



散っても散ってもまた返咲く。
そんな桜のように私は。






「いままでサンキュー」

「・・・これからもよろしくね。」







これから、自分の道を歩いていこう。












これはへの言葉
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