短編

□うそつき
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全部全部、演技という名の嘘なのです。

意地っ張りな強がりも、負けたくないだけの見栄張りも、誤魔化したくて言い訳を言った事も、全部全部。

ねえ気付いてくれる?


「昨日一緒にいた奴、誰でィ」
「え…?………あぁ、従兄弟」

うそである。

「…嘘だろィ」
「―――うん」

あたしは彼が好きで、彼もあたしが好き。いわゆる両思い。だから彼は、あたしの嘘に気付いた。

だから、そんな嘘はすぐに二人の関係に亀裂を作って二人の関係は脆く、砕け散った。


「……まあ、いっか」


昨日今日の出来事に、『別れよう』のメールに目を向けて呟く。正直そこまでショックが無くて、その程度だったんじゃないかと自己解決させてしまった。

でも本当に辛いのは、毎日毎日繰り返し起こる学校生活というもので、今までと違う関係になったあたし達は一体これからどう接していけばいいのだろう。
会話できるだろうか、ちゃんと友達としていられるだろうか、他の女の子と彼が話している姿を見て胸が痛んだりしないだろうか。

あれ、好きなんじゃん。全然未練タラタラじゃん。

「……」

その夜は、改めて自分の気持ちに気付けばすぐさま眠りについた。
分からなくなってしまって、眠気がその思考を閉ざしたのだと思う。


元はと言えば総悟がいけないんだ。
だって、綺麗な顔して、運動神経が良くて、頭も本当は良い癖にわざと悪い成績をとってるのだって皆知ってるんだ。
だから彼は人気者で女の子も男の子もすぐ周りに集まって、あたしの入る余地はない……はずだった。

けれどもいつの日かあたしの隣には総悟が居て、総悟の隣にあたしがいるようになった。
告白したのはあっちで、かれこれ一年は一緒にいたのに…自分で告白してきたくせにアッサリとあたしを振った。
まあそれもそのはず。浮気まがいな事をしてしまったのだからきっと身を引いてくれたんだと思う。

でもね、そんな事しちゃったのは誰のせいだと思う?
彼が先にそういう事をしたからなんだよ。あたしが気付いていないとでも思っているのだろうか。

『昨日、総悟君がね…』
『ちょっと、あの子いるからやめなって!』

スカートの短い女子生徒の横を通り抜けて、その会話を右から左に受け流すように耳に通した。

総悟君が?何をしたの?

その時思った事は、次の日にすぐ知る事ができたのだ。神楽ちゃんが彼の秘密をあたしに教えてくれた。何だか自分は知っているのに彼女であるあたしが何も知らないで総悟と一緒にいるのが見て耐えられなかったんだって。
良い子だなぁ、と思いつつも聞いた後に少し後悔してしまったのは事実。
でもあたしはあえてそれを言わないで「ありがとう」だけ言った。あたしの極力優しい嘘。

総悟はあたし以外の女の子と一晩を過ごしているんだって。

男はヤる相手と恋人は違うんだっていう見解を知っていたけれども、やっぱりそれは非常に辛い現実で、あたしには耐えられそうになかった。
けれどもまるで何も知らないかのように日々を過ごしていく。彼も、特に変わった様子は見せない。ああ、あの見解は本当なんだなぁってひしひしと伝わってきた。

だからあたしも同じ事をしてやろうって思ったの。
総悟という彼氏がいる中、告白してくれた男の子を利用した。
あえて、総悟のよく通る道で仲良く話した。別に仲良くないんだけれども、彼に思い知らせるためのあたしの嘘。




次の日、いつものように総悟に挨拶をした。
一瞬体が固まったけれど総悟もいつも通り返事してくれた。その一連の動作にあたしは少しだけ胸を下ろした。

「ね、今まで何人の女の子と寝たの?」
「…いきなりなんだよ」
「あはは、だって、あたしと付き合ってた時も家に連れ込んでたりしてたんでしょ?あたしとはヤった事無い癖に」

案の定、総悟は目をかっと開いて驚いていた。
隣の席同士、話す事は多々ある。
いつも通りの会話にこんな事カミングアウトさせられたらそりゃあショックも大きいんだろうな。
なんて、呑気に考えて総悟の様子を面白がって見ていた。


「ねえ、何であたしがあの男の子とキスしたんだと思う?」
「…」
「最後のお願いだからって言われたからだよ。なのに総悟は思いっきり勘違いしてくれたよね。あたしは君を傷つけないようにって嘘をついたのに、それが嘘だって分かってもそれ以上追及してくれなかったのは、あたし以上に良い女の子がいたからなんでしょ…」

段々と小さな声になる。
休み時間で騒がしい教室は、本当にざわついて聞えて、ただの雑音にしかなっていなかった。

「…悪ィ」

総悟は否定はしなかった。
なんだ、結局、あたしと同じじゃない。

柄にもなく目に涙をためて総悟を見上げた。


「うそつき…!」


悔しくて、悔しくて…あれ、昨日は「まあいいか」なんて呟いたのに。
その時流せなかった涙がボロボロと頬を伝ってスカートを濡らしていく。

総悟はここが教室であるというのにも関わらず、あたしを抱きしめた。
肩が震えて、両腕を伝って総悟の体も同調に揺れる。

結局、あたし達の関係は終わってしまったけれども、そのぬくもりだけは忘れないって事でいいかなぁ?











突発的に失恋のお話。結局何が書きたかったのか分かんなかったです。

2011/06/20


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