短編(ブック)

□夢に終わりを
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それからメデスとサブローは男の宇宙船に連行されてしまっていた。気絶したサブローは途中で目を覚ましたものの、殴られた衝撃が大きく、まだ歩けない状態だった。メデスはサブローを背負いながら、男たちに大人しく付いていく。


「そういえば自己紹介が遅れたな。私はアクイラという。よろしく頼むよ、メデス殿。」
「…随分な歓迎方法だな。その呼称も気分が悪い。」

「そう言わないでくれ。これは私たちなりの配慮なのだから。」


到着した男の部屋で、メデスは腹立たしげに悪態をついた。背中のサブローは少し怯えた様子で二人のやり取りを見つめている。そのサブローを安心させるように支える腕に力を込めた。


「配慮?これのどこが配慮だと?」
「配慮だよ。被害を最小限に留めるためのな。」


にやりとアクイラが笑う。彼が指を鳴らすと同時に、幾人かの男たちが部屋の中に押し入ってきた。その手には銃器が握られており、メデスは表情を歪めて舌打ちをした。


「他の地球人がいるところで銃撃戦は避けたかったのでね。もっとも、そうなれば真っ先にそこの少年が死んでいただろうが。」
「貴様っ…!」

「恐ろしい目だな、メデス殿。察しの良い貴方なら、この状況下でどうするべきか理解できると思うのだが?」


完全に優位に立ったアクイラに向かって、メデスが殺意の籠った目を向ける。しかし、感情でいくら反発したところで、この状況下の中反撃することはできなかった。メデス一人であれば死ぬのを覚悟でアクイラに一矢報いるくらいはできるだろうが、サブローを心中同然の行為に巻き込むわけにはいかなかった。

メデスが了承する他ないことに気づいているのだろう。この状況を生み出したアクイラは笑みを浮かべるだけだ。そのことに苛立ちながらも、メデスは吐き出すように言葉を放った。


「…分かった。貴方方に協力しよう。」
「賢明な判断、有難く思う。これからよろしく頼むよ、メデス殿。」


これが、サブローの中で平和な時間が終わった瞬間だった。














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