短編(ブック)

□空の激浪
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薄暗い部屋の中で、幾人かの軍人が真剣な表情でモニターを見つめていた。モニターに映っているのは、五匹の巨大なドラゴンの姿だ。そのドラゴンの腹にはケロン人特有のマークが付いている。そして、そのマークを持つのは現在地球侵略の先行部隊として派遣されている、ケロロ小隊の者たちだった。


「この力は素晴らしいですな。」
「ええ、この力さえあれば地球だけではなく、他の惑星での侵略も容易になるに違いありません。」


一人がドラゴンの力を絶賛すれば、他の者が同意を示す。彼らは次々とモニターを展開させていき、妖しげな笑みを浮かべた。


「やはりあの計画は実行するべきでしょう。」
「だが、ばれれば我らの首だけでは済まないぞ。」

「実験は何もケロン人でなくともいい。…これを見ろ。」


リーダー格と思われる男が、モニターを展開させる。そこには一人の少年が映っていた。灰色の髪の毛に、地球を思わせる青い瞳。黄色いドラゴンの上に立ち、緊迫した場で余裕すら窺わせる笑みを浮かべている。


「この少年は?」
「名はサブローと言ったかな。あのクルル曹長のパートナーだそうだ。」


男が言った言葉に、他の者が目に見えて動揺した。クルルの名は、ケロン軍では有名なのだ。特に、技術面に関する部署ではクルルの名を知らぬ者はいない。ケロン軍始まって以来の天才を知らぬ者はいないのだ。

だからこそ、皆は男の言葉に驚愕を隠せなかった。クルルの人嫌いもまた、天才の浮名と共に有名な話なのである。

その彼が、パートナーとして認めている少年。興味がないわけがなかった。


「この少年を被験者として、計画を発動させる。」



静かな男の声が響いた。












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