短編(ブック)
□ケロロRPG
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ドロロが情報収集から帰ってくる頃には、もう日が傾いて陽が沈み始めていた。宿屋で休んでいたケロロ一行はドロロがもたらした情報に聞き入っていた。
「やはり城では一人息子殿が行方不明になっていると大騒ぎでござったな。」
「何か変わった情報がなかったのか?」
「何やら、後継問題でも揉めているようでござったが…、それ以外では目立った情報はなかったでござる。」
「後継ですかぁ?…一見平和に見えて、内側はドロドロしてるんですねぇ。」
タママが呟くように言えば、周囲から白い目が向けられる。よりにもよってお前が言うか、と言外に雰囲気が露わしていた。そんな雰囲気に気づいているのかいないのか、タママは同じく微妙な雰囲気に気づかないドロロに向かって質問した。
「でも、息子さんだったら後継で困ることなんてないんじゃないですかぁ?」
このような時代はケロン星にはないため詳しくは知らないが、教養として学んだペコポンの知識が現状に疑問をもたらす。行方不明が原因で慌てているなら分かるが、後継問題はどうやら元々あったらしいものだったのだ。
タママの言葉に、ドロロが付け足すように言った。
「いや、それが…息子殿は後継にはなりえないと言っていたのでござる。」
「…きな臭ェな。そんで、その息子はなんて言うんだよ、先輩。」
クルルが表情を顰めながらドロロに問いかける。するとドロロはほんの少しだけ、クルルへ視線を映した。その視線にクルルは首を傾げる。どうしてか分からないが、ドロロの言葉が酷く重苦しいものに感じたのだ。
そして、ドロロがゆっくりと口を開く。
「参之丞殿、というそうでござる。」
参之丞、頭の中にすんなりと入り込んできた名前。町民の間で何度か聞いたことのある名前に似ている。参貴、と呼ばれていた女勝負師。
それは何かの予兆だったのだろう。二つの名前は、それが身体の一部であるかのように、クルルの中へ入り込んできた。そして、胸に生まれた僅かな動揺が後に大きなものとなって、ケロロ小隊全員を巻き込むものになっていく。
「会いに行ってみるでござるか?」
「え、でも行方不明なんでは…?」
「それが、近頃町の集会所で参之丞殿に良く似た者を見かけるようなのでござる。」
ドロロの言葉にクルルが顔を上げる。ドロロはクルルの方を向くと、覆面で隠れた口元を緩ませた。ドロロには気づかれていたらしい。クルルが参之丞と参貴と呼ばれる人物に興味があるということに。
「…なるほどなァ、そういうことか。」
「どうしたんでありますか、クルル曹長。」
「その参之丞って奴と、今城下で噂になってる参貴って勝負師。…二人が同一人物だっていいてぇんだな?」
クルルが確認するように言った言葉に、ドロロが頷く。二人の間で交わされたものに、ギロロが疑問の声を上げる。
「待て、参貴というのは女ではなかったのか?」
「一人息子さんってことは、人違いなんじゃないですかぁ?」
「いんや、同一人物だと思うぜェ。何で性別が違うのかは知らねぇがな。」
偶然にしては出来過ぎている、とクルルが言えば、他の皆は皆神妙に頷いた。その日は結局それ以上話が進まず、明日集会所へ足を運ぶことに決定した。
そして、ケロロ小隊は新たな出会いを迎えることとなる。