小説
□お姫様と喧嘩(レンリン)
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「……」
「……」
沈黙。
静かで冷ややかな空気か流れる。
怖い!今すぐ消失を歌っていいか!?
「リ…」
「レンなんか嫌い」
…俺、今なら死ねるぜ。
嫌い嫌い嫌い……俺の頭の中でエコーがかかる。
はぁ…何でこうなったかというと……
「レン、音ハズれてるわよ」
ワールドイズマイン(俺Ver)のレコーディングをしている時だった。
メイコ姉の指摘が俺にグサリと刺さる。
…いつものように、上手く歌えない。
「リンを想って歌いなさい」
…っ!
そんなん、分かってる…!
この歌のお姫様役はリン。
だからリンを想って、歌わなければいけないんだろ?
だからリンの笑顔を思いだして歌ってるのに…
所詮、俺の気持ちなんてこんなものか?
初恋は叶わないっていうけど、本当なのか?
いつの間にか悲しみと怒りが混ざって、自分でもよく分からない気持ちになった。
「レーン♪レコーディング終わった?」
こんな最悪なタイミングで、リンが来てしまった。…来てしまったんだ。
「…るさいな」
この時メイコ姉もリンも、雰囲気の違う俺に首を傾げていたのを覚えている。
「うるさいな!俺だってちゃんと歌いたいんだよ!だいたい…、リンを想って歌っても意味ないんだよ!」
本心から言ったわけでは無い。
だけど俺がリン達に、悲しみと怒りを一方的にぶつけてしまったのには変わりないよな。
「な、何よ!私が悪いとでも言うの?
なら、お姫様役をミク姉にチェンジしなさいよ!PVも全部、やり直しだけどね。」
リンの瞳からポロっと涙がこぼれた。
この涙を合図に、俺は我にかえる。
レコーディング室を勢いよく出ていったリンを追いかけて……
こんな状態になった。
「ご、ごめんリン。
ちょっとムシャクシャしてて…」
「ふんっ、私がお姫様役だからムシャクシャしてんじゃない?」
(ノ><)ノ
めっちゃリン様キレてますっ!
「ち、違う!
俺はリンじゃないと、この曲は歌わないっ!」
「嘘だ」
全力で否定しても、そう簡単にはいかないんだな…
…いつもは喧嘩しても、すぐ仲直りしてんのに…
「じゃあ、私をお姫様役にする?
PVやってあげるよ」
ネギをかじりながら、緑の義姉が立っていた。
てかネギ臭っ!
「どうする?レン?」
モグモグと口を動かしながら、聞いてくるミク姉。
器用だなオイ。
「俺は、リンじゃないと歌わないよ」
素直に言う。
だいたいミク姉が姫役だと?ネギ王国のお姫様か?
「元は私の曲なんだけど」
心の声が聞こえたの!?
「とにかく、私か姫役やるわ」
「だからっ…」
『いいから、うんって言いなさい』
俺にしか聞こえないぐらい小さな声で同意を求めてくるミク姉。
な、何?なんでなんだ?
『私を信じてっ♪大丈夫だから…
仲直りしたいんでしょ?』
仲直りという言葉は今の俺にとって、神だった。
…信じてみるか、ネギの神様を…
「じゃあ…ミク姉に頼もうかな」
今まで、じっとしてたリンが明らかに動揺している。
目がキョロキョロしてんもん。
何で!?
ネギ神、どういう事!?
「じゃ、そういう事で♪
リンは、別にいいんでしょ〜?」
わざわざ刺のある言い方。
…あんまリンを虐めんなよ。
今の俺じゃ、人の事言えないけどな。
「や…じゃない!でも嫌!
レンの嘘つき!」
日本語おかしいぞ。
てか、まさかの失敗?
「レンは最初、私以外なら歌わないっていったじゃん!
やっぱり…嘘…だったの?」
…ミク姉ヘルプミー!!
って、いねぇしッ!!
どこいった!あのガセ神!
…とにかく、落ち着くか。
「ごめん。さっきの冗談。
ミク姉が姫役なんてヤダヤダ」
リンはフゥッと溜め息をつく。
呆れられたか…
「ば、ばか…!
本当にミク姉にしちゃうかと…思った」
!?
予想外の返事が返ってきた。
「…ごめん。ムキに…なっただけなの。
レンが本気で…あんな事言ったわけじゃないのも…分かってるよ」
しゅんっと下を向き、泣き声を押し殺すように一言ずつ丁寧に訴える。
泣くのを我慢しているようだ。