小説

□後悔 〜リグレットメッセージ〜
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後悔だけが残った。
後悔しか残らなかった。

なぜ君が処刑される時、自分は「私が王女のリンです」って言えなかったのだろうか。
そんな後悔を胸に秘め、ひそかな言い伝えを試そうと私はしていた。
この海に昔からある言い伝えを。

「会…た…」

かすれた声で呟き、ビンの蓋をとる。
あの日を境に、私は一人で生きてきた。
そんなの自業自得だろう。
そして私がもう、何も求めてはいけない事ぐらい分かっている。
だけど…一つだけ…
一瞬でいいから叶えたい事がある。

「会いたいよ…」

たった一度で良い。
君に会いたい。
でも私のした罪は重い。
そんな奴の願いを叶えるほど、神様は優しくないだろう。
運命はともあれ、私はもう自分の思いを閉まっておくことが出来なくなった。

紙にメッセージを書く。
このテガミが君に届くことを祈って…
私の最後の夢が叶うことを祈って…
ふいに、雫がポタっと落ちた。
雨なんか降っていない。

「泣かないって決めたじゃんよ」

私は泣く事も許されないのに。
なんてワガママなんだろうな。

ゴシっと右手で乱暴に涙を拭きとる。
そしてビンを海に流した。

「ごめんね…
また…生まれ変われたら……」

決して届かない声だろうが君に向かって言った。
だけど最後の方は、また涙が溢れて言葉が出なかった。

涙をとめるため海から駆け足で離れる。
でも、その足はいきなり止まった。

なんで…?
どうして…?

周りを見渡すが誰もいない。
    、、、、、、、、
どうして君の声が聞こえたの?
あれは確かに君の声だった。

そして私は無意識に答えた。

「…うん」

はたから見れば独り言だろう。
だけど私には独り言ではなかった。



「もしも生まれ変われるならば、その時はまた遊んでね」



と、私の耳には聞こえたから……

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