お題・挑戦系

□黒趙雲にまつわる24のお題(後編)
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『23.意地悪』

ぱちんと乾いた音が書庫に響く。
書庫のかび臭い空気の中に埋もれるようにして馬超と趙雲が向かい合って座っていた。
趙雲は少し考え込んだ後、手を伸ばし黒い石を盤上に置く。
とたんに馬超の顔色が変わる。

書庫を整理していた馬超が碁盤を見つけたのは数刻前のことだった。
一緒に整理していた趙雲は始め遠慮していたが、馬超の熱意に負け一緒に打ち始めたのだった。
「言っておくけど、私は強いよ」
「ふん、俺だって負けん」

それからしばらくの時間が書庫に流れた。
じっと基盤をにらみつける馬超はやがて唸り声を上げ始める。
その様子を趙雲は頬杖をつきながら斜に構えて見る。
馬超は何度も打とうとするが、そのたびに躊躇いすぐに腕を引っ込める。
(孟起の困っている顔は可愛いな。そういえば書庫の整理どうするかな、姜維にでも任せておけばいいや)
絶え間ないことを考えながら趙雲は馬超を眺める。
馬超は一人で百面相をしたあと、遂に決意したのか右隅の方に白い石を置いた。
(なるほど、ここに注意を行かせて逆を突く手か)
趙雲はすぐに馬超の置いたところから少し離れたところに石を置いた。
とたんに馬超の握り拳がが膝を打つ。
「っくそ!」
趙雲の一手でそこは死地となり、馬超の今までの手は全て無効になった。
馬超は涙ににじんだ目で趙雲をにらみつける。
その身体は屈辱に打ち震え、泣かないようにするのを耐えているのがよく分かる。
しかし趙雲はそのさまに気が付かない振りをして馬超から視線をそらし、基盤をじっと見る。
「ほら、孟起の番だぞ。早く打て」
その声音には自分が今どんな手を打ったのか何も知らないかのような響きを帯びていた。
馬超は目尻に涙を溜めたまま、趙雲の代わりに基盤をじっとにらむ。
(あー、もう孟起は可愛すぎる!襲ってしまいたいな)
趙雲は己の邪な願いを悟られないように小さなため息をそっと吐いた。
書庫の埃が静かに2人の上に積もっていくそんな午後


fin
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