お題・挑戦系

□黒趙雲にまつわる24のお題
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『1.拘束』


竹簡を持って歩いていた趙雲は前方の廊下を歩く人影を気がついた。
色素の薄い髪をふわふわと少し早足で歩いている。
趙雲は物音を立てないようにそっとその人物に近づくと、後ろから声をかけた。
「馬将軍、急いでどちらに?」
とたんに前方を歩いていたその人物の動きが止まる。
「べ、別に俺がどこに行こうが自由だろ!」
趙雲はにこりと微笑むと、両腕を馬超の体にまわした。
慌てて振り上げた馬超の手を掴むと、その手に持っていた竹簡を持たせる。
「はい、孟起。これは丞相からの書簡だ。次の軍議までには読んでおくようにだってさ」
「お、俺は今から、街内に買い物にいくんだ。あとで読む」
そういって腕を振り解こうとする馬超を趙雲はよりいっそう強く抱きしめた。
「じゃあ、ちゃんと読むんだよ」
「わ、わかった!だからもう離せ」
耳を赤くして暴れ始めた馬超の後姿に笑いながら趙雲は言う。
「約束だよ」
耳元にそう囁くと、首筋にかるく口付けた。
そして馬超を抱いていた腕をはなす。
馬超は拘束から離されると、首筋を押さえ、仁王立ちになりながら趙雲の方をにらみつけた。
「お前、こういうことはするなよ!」
「ごめんごめん、あまりに孟起が可愛かったからついね」
「ついじゃない!この馬鹿が!!」
それだけ叫ぶと、馬超は駆けていってしまった。
あっという間に廊下の端まで行くと、そこから軽々と欄干を乗り越え消えた。
その後姿を趙雲は眼を細めながら、眺めていた。
「この手を離せば、お前はどこまでも行ってしまう・・・」
外には青空が広がり、花は咲き乱れ小鳥は歌いながら遊び舞っている。
その中を馬超はどこまでも駆けていく。
「だから、せめてこの腕のなかでだけでも捕らえさせてくれないか?」
走っていた馬超は少しだけ速度を落とすと、後ろを振り返った。
そして一体誰の顔を思い出したのか、微笑むとまた駆け出していった。


捕らえてくれる人がいるからこそ、帰れるところがあるからこそ、彼はどこまでも駆けていける。


fin
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