その他

□金色の預言者
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「わうっ!」
ふいにアマテラスが鳴いた。
「おいおいアマ公、“気にするな”ってそりゃあ無理だって」
「わうわうっ!」
「え?飯を食べればどうでもよくなるって・・・それはお前のことだろうが」
違うの?とばかりにアマテラスはじっとウシワカを見つめる。
「く〜ん」
ウシワカからなんの反応も返ってこないので、アマテラスは耳をしょんぼりとたらして下を向いてしまった。
「アマ公・・・すまねえな、こいついっつもいっつも呑気で―」
「あっはっはっは」
侘びを入れようとしたイッスンの言葉を途切れさせたのはウシワカの笑い声だった。
いままでの姿からは一転して明るく笑いあげるウシワカのにイッスンは驚きのあまり声を失った。
「わんっ!」
元気を取り戻したウシワカにどうだとばかりにアマテラスが誇らしそうに鳴いた。
「いったいどうなってんだ?」

「本当に君にはいつも――」
ウシワカはそこで言葉をとめた。
そして目を細めじっと空を見つめた。
その横顔はまるで空の向こう側を見ているかのようだった。
風が吹くと同時にウシワカの顔に喜色が浮かんだ。それはおもわず見ほれてしまうほどの本当に心からの笑みだった。
急にウシワカはこちらを振り返った。
「あははは、ゴムマリ君ひどいこと言ってソーリー。ミーは用事が出来たから退散するよ。グッバイベイビー!」
ウシワカはいつものようにけたたましく騒ぎながら去っていった。
飛びながら去っていく様子もまるでスキップをしているかのように足取り軽やかだ。
「本当にあれはなんだったんだ・・・?」
「わんっ」
アマテラスはただ一言、その去りゆく姿に鳴いた。


ウシワカは木々をわたりながら移動を続ける。
ひときわ大きな樹へとわたるとさらに大きく跳んだ。
風にあおられ羽飾りがなびく、それはまさに飛んでいるかのようだ。
ウシワカは飛びながら太陽を見上げた。
太陽はいつものように明るく辺りを照らしている。
「本当に君にはいつも――」
そこまで呟くとウシワカは幸せそうに笑いながら進む。
次の物語の舞台へと・・・


「口にすることさえももったいない幸せがあるんだって、ミーはアマテラス君に教えてもらったんだ」


空には明るく温かい太陽が優しくすべてのものに輝いていた。
その中を金色の小さな預言者がうれしそうに走っていく。
いったいどんな幸せな未来をみたのやら・・・
それは次のお話で・・・
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