FF7

□パズルの思い出
2ページ/2ページ

永遠とも思えるときが過ぎた。
異変に気が付いたのは、狩りを終わらせ小屋に帰る途中だった。
「兄さん・・・」
「ああ、ソルジャーの連中がいる。俺が始末してくるからお前は先に帰っていろ」
「わかった」
僕は兄さんから今日狩ったネズミを受け取ると、小屋へ走っていく。
これまで何度もソルジャーや研究所の人間とは遭った。そのたびに兄さんが片付けてくれた。
だから今回もまたいつも通りになると思っていた。

あたりを見回して誰もいないことを確認してから小屋に入る。
すると中に白衣を着た男が立っていた。
「気配がなかったのに、どうして!?」
「ふん、お前たちだって狩りの時には気配を消すじゃないか。それと同じだ」
その男はあのいやらしい笑い声の研究者だった。
「自由とやらの暮らしは楽しかったか?」
「兄さんがいなくたって、一人でできるもん」
闇の触手を男へと伸ばそうとしたが、闇は現れてすぐに消えてしまった。
驚いて自分の手を見る。いままでこんなことはなかったのに・・・
「くっくっく、不思議そうな顔をしておるな・・・それでこそがんばった甲斐があったものだ」
男は白衣のポケットの中から白い石を取り出して掲げる。
「これは闇を相殺する光のマテリアだ。作るのは大変だったんだぞ」
その石は白いながらもどこか青い光を放っていた。
「ちなみに、私と一緒に来た連中にはこれと反対に闇のマテリアを持ってるんだがな」
「兄さん!!」
僕は反射的に小屋を飛び出すと兄さんと別れた場所へ急ぐ。

そこにはソルジャーに囲まれぐったりとしているヴァイスの姿があった。
ヴァイスの体は薄汚れていてところどころ血がにじんでいた。
「少しばかり強く殴りすぎたか」
「ふん、今までの礼だ」
そういって一人が兄さんの腹をけった。
兄さんは倒れているばかりで何の反応も返さない。
「兄さん!!」
僕はあわてて駆け寄ると、ソルジャーを押しのけ、兄さんに抱きついた。
「お、片割れのほうか」
「残念だったな、兄さんは俺たちが倒したばかりだ。手遅れだったな」
「おい、やめとけよ。俺たちのマテリアじゃこいつの力を止められねえぞ」
「心配するなよ。ヴァイスが一緒にいれば、力は出せれないそうだからな」
「じゃあ、主任がくるまで遊んでもらおうか」
ソルジャーの一人がにやにや笑いを浮かべながら近づいてきた。
「許さない」
怒りにはらわたが煮えくり返りそうなのに、なぜか頭の中はどんどんと冴え渡っていった。
「ほう、どう許さないってんだ。教えてみろよ」
男が僕のほうに手を伸ばしてきた。
その油断だらけの男に向かい力を発動する。
とたんに闇が触手を伸ばし、男を飲み込んだ。
「なっ!!お前、イタルナをどこへやった」
「心配しなくてもすぐに同じところへ連れて行ってあげるよ」
足元から現れた闇が飲み込もうとしたが、男はあわてて飛び退りよけた。
「くっ、どうなっているんだ!?ヴァイスがいれば力は発動できないはずだろ」
「さすがにいい動きをするね。さあ、どこまで耐えられるか試してあげるよ」
頭の中でパズルが崩れいく音がする。
とっても怖いことが起きてしまいそうで、僕は必死にパズルを押さえるんだけど、どんどんどんどん崩れていく。
「まさか、暴走か!?」
「ひとまず引くぞ」
逃げようとした男の足に闇が触手を伸ばし捕らえた。
「うわああああ!」
わざとゆっくりと闇に飲み込ませる。
「ふふふ、いい悲鳴ですね。ねえ、あなたはどんな声で鳴いてくれるのかな?」
ヴァイスから手を離すとゆっくりと立ち上がり、恐怖に顔をゆがませる男へと近付く。
ぱらぱらとパズルが崩れていく。
「ば、化け物・・・」
ねえ、僕は誰・・・?
パズルが崩れて何もわからなくなってしまった。
怖くて怖くて僕は膝小僧を抱えて闇の奥のほうへ潜る。
最後に覚えているの醜く顔をゆがませた男と、ひどく楽しげに笑う僕の姿。
そこには兄さんの姿がみえない。
ねえ、兄さん・・・どこにいるの?
パズルがまたひとつ外れて闇に堕ちてゆく。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ