FF7

□愛ゆえの殺意
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何気なく触れたヴィンセントの手は冷たかった。
こいつはもう死ぬんだ。そう思うと少し心が痛い。
なぜ痛いんだろう。
「まさかな・・・・私がこんなやつのこと」
そういいながらも血の気がうせてなお赤い唇に目を奪われる。
指でなぞるとほのかに温かい。
そんな些細なことに安堵する。
少しためらった後、そっと口付けた。
誰も見ていないからこそできた。そうヴィンセント自身すら知らないからこそ・・・
「ふん、こんなことはただの気の迷いだ」
そういって、もう一度唇を指でなぜる。
「そう、ただの気の迷いだ」
宝条はそっとメスを下におくと、ガーゼを手に取り胸部の傷口を押さえた。

手術は成功し、ヴィンセントは死のふちから生還した。
ジェノバ細胞を埋め込まれた体は、何度切り刻んでもすぐに修復される。
体は元に戻っても意識は元には戻らなかった。
培養液の中で漂いながら静かに眠るヴィンセントを見ていると、胸から何かがなくなったように痛む。しかしそんな痛みはただの気の所為だと片付ける。
だからルクレツィアが彼を自分の研究室に連れて行っても特にとがめなかった。
ただヴィンセントが戻ってきてくれればよかった。
自分の作った体に早く彼が戻ってきて欲しかった。
もし戻ってきてくれるのならば、またいくらでも殺してあげよう。
ヴィンセント・バレンタイン
腕の中で何度も死んで、そして蘇る。
それは死してなお愛することのできる汚れすぎた恋心。
狂うのが先か、死ぬのが先か・・・ほかの道は教えてあげない。
罪を感じるその心ごと殺してあげるよ。それが私の愛情表現。
ヴィンセント、私は結構優しい男なんだよ。君に対してはね。
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