京極

□押入れタイムトラベル2
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「なんだ!?」
しかし闇は一瞬で払われた。開けたのは京極堂だ。
「まったく君はおかしなことをするね。つっかえ棒でもしておこうか」
京極はごく軽いつもりで外を見た。

「あれ?巽さんに京極堂さんこんにちは。またいらしたんですか?」
そこにいた若い男が筆を持ったまま振り返った。
「山岡君か・・・また来てしまったよ」

「ここが過去とやらか。なんだかすごいな。で、いつなんだ?」
榎木津が全身輝いて見えるほど楽しそうだ。
「江戸だと思われますが、山岡君今は何年なんだ?」
「えっと・・・安永4年だとおもいますけど」
百介はまだよく話についていけていないようだ。だが、相手は妖怪なんだから人間と違って当たり前だとか思っているから、無理にあわすつもりはない。
「外に行ってみたいな。よし行くぞサル!!」
榎木津は関口の手をとると玄関に向かおうとする。関口は抵抗する。

「巽さん嫌がっているみたいだし、止してください」
「神にたてつくとはいい覚悟だ。お前名前はなんていうんだ?」
「山岡百介ですけど・・・」
「そうか僕の名前は榎木津礼二郎だ。覚えておくがいい山田」
「・・・山岡ですけど」
「わかった山城」
「・・・」
京極堂が百介の肩に手を置く。
「あきらめたまえ、こいつはこういう人間だ。人の名前は覚えない。人の話は聞かない・・・まったく」
「僕は神だからいいのだ。それより探検に行くぞ!」
榎木津が振り返るが、関口は騒動の間にまた押入れに入っていったようで、姿が見えない。

「ほら、サル探検に行くぞ!!」
榎木津は押入れの戸を開けた。
例によって逃げた後のようで関口はいなかった。
「まったくつまらんな。よし京極堂!お前でいい探検に行くぞ。山中もついてこい!」
榎木津は元気よく叫ぶと、再び玄関に向かった。
京極堂も玄関に向かった。なにしろ古本が手に入るかもしれないからだ。この男がそのチャンスを逃すはずがなかった。金は持ってなかったが、いざとなったらどんな手段を使ってでも本を集めるつもりだった。

2人が嬉々として玄関に向かったので、百介もついていこうと足を前に出した。
その袖が後ろに引かれた。
百介はなんだろうと後ろを振り返った。
そこには関口が袖をつかんでいた。
「せきぐ・・・」
百介が名を言おうとすると、関口は自分のほうにさらに百介を引き寄せた。
そしてそのまま押入れの中に2人で入っていくと、押入れの戸を閉めた。
ぱたんという乾いた音が部屋に響き、消えていく。
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