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□退屈潰し
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薄暗い部屋の中に艶やかな声が響く。
しかしその声は外まで流れる前に闇に飲み込まれ消えた。
椅子にだらしなく座りながら酒を飲む曹丕の眼下で司馬懿が2人の屈強な兵士に犯されていた。
喘ぎながら曹丕の方を見た司馬懿の瞳は彼を捕らえるかのように明かりを反射し赤く光っていた。


「つまらんな」
酒を飲んでいた曹丕がそう呟いた。
机の向かいで同じように酒を飲んでいた司馬懿が顔を上げて、彼の方を見る。
曹丕は机に頬杖をつきながら、杯を舐めるようにして空ける。
「つまらん」
もう一度そう呟くと、傍らで給仕していた従者に何かを申し付けた。
一礼すると従者は部屋の隅にある棚から瓶を持ってきた。
「もういい、下がれ」
瓶を曹丕の横に置くと、従者は言われたとおりに部屋から出て行った。
曹丕はその男が出て行くのを見送ってから、その瓶を手に取った。
そして司馬懿のまだ酒が残っている杯にその中身を注ぐ。
それはどろりとした赤い血のような液体であった。
曹丕はなおも無表情でつまらなそうにしている。
司馬懿も無言でその杯を手に、軽くそれを振るう。
底に残っていた酒と注がれた液体が混ざり、色が多少薄くなった。しかし未だに血のような色は目に毒々しい。
「仲達、飲み干せ」
司馬懿はそれに答え、口元を上げやや笑みのような表情をつくると言われた通りに杯の中身を飲み干した。
それはどろりとした甘さで喉を焼き尽くす。
空になった杯を机の上に置くと、そのふちを白い指でなぞる。
杯にわずかに残っている赤い液体がその指に付く。
司馬懿はその指をそっと口元に運ぶ。
「仲達よ、もしそれが毒だとしたらどうする?」
司馬懿は曹丕に向かって微笑むと、指先を赤い舌で舐めた。
ほの暗い明かりに照らされて浮かびだすその姿は妖艶であった。
司馬懿は椅子から立ち上がると、机の上に手を付き曹丕の方に身体を乗り出した。
そして先ほどまで赤い液体が付いていた指をさし出しながら、赤い唇を赤い舌で舐める。
「その時は子桓様の命じるままに、死にましょう」
「ふん、私の命令ならばなんでもするといのか」
「この私を楽しませてくれるものならば、従いましょう。あなたと同じで退屈は嫌いなのです」
曹丕に向けていた腕を今度は大げさな動きで己の胸に当てる。
曹丕はその様子をおかしそうに笑うと、手を一つ叩いた。
「ならば、楽しませてやろう」
音を合図に部屋の扉が開き、屈強な男が2人入ってきた。
曹丕は酒を己の酒盃に注ぎながら、彼らに冷酷な声で命じた。
「そこにいる司馬懿を相手をしてやれ、退屈らしいからな」
司馬懿は曹丕が手に持つ酒盃を奪うと、机に腰掛けて一気に飲み干した。
曹丕はその様子に笑みをつくると、更に男たちに命じる。
「好きなように散々に犯せ」
男たちはその命令に頷くと、司馬懿に向けて足を踏み出した。
司馬懿は杯を持ったまま机の上から降りると、髪を縛っていた組紐を解いた。
解かれた髪が流れるように滑り落ちる。
組紐を手に酒盃を机に置くと、近づいてくる男たちに微笑んだ。
「せいぜい頑張って私を楽しませろ」
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