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□闇に堕ちた鬼
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「闇に堕ちた鬼」


うっすらと開いた瞳に暗い部屋が移る。
ここはどこだろう?
記憶にない部屋に頭の中がわずかに混乱する。
動こうとすると、手が後ろで拘束され動けないことに気がついた。
あわてて自分の姿をみると、なぜか服を取り払われた状態で床に転がされていた。
近づいてくる足音が一つ。
視界の先に一人の男が映る。
その男は敵である曹操であった。不敵な笑みがその顔には浮かんでいた。
「ようやく起きたか、鬼神よ」
そういい、しゃがみこむと呂布の顔を覗き込んできた。
呂布はぼんやりとした思考の中から記憶を必死にたどる。
いったいどうしてこんなことになっているんだ!?
ふいに一つの結論が頭の中に浮かんできた。

「そうか、俺は負けたのか・・・」

その呟きが聞こえたのか曹操の笑みが色を増す。
「そうだ、お前は負けたのだ。それもお前の部下の手によってな」
一番嫌な予感が胸の中に湧き上がる。それを呂布は必死に押さえ込む。
「わしも驚いたものよ・・・死んだように眠るお前がお前の部下の手によって持ち込まれた時はな」
驚きを隠せない呂布の顔を覗き込みながら曹操は喋り続ける。
「まさかわしもそのような方法でお前が手に入るとは思っていなかったが、これは好機とおもって貰っておいたわ」
「その、者たちは・・・」
震える声の問いかけに、曹操は笑いながら答える。
「ああ、口封じのために消えてもらったわ。もとより裏切り者はいらぬ」
「!・・・曹操、お前!」
起き上がろうとする呂布の肩に足をかけると、再び地面に縫い付ける。
「黙れ、呂付よ。己の立場、わかっているのであろう?」
そう、戦に負けた武将がどうなるのかを・・・
呂布は己の運命を悟ったかのように大人しくなると、目を閉じた。
「ふん、そのようにあきらめるのもつまらぬな。まあ、お前はもうわしのものだ。せいぜい楽しませてもらおう」
そういい、呂布の口を開かせると瓶の口を中に押し込む。
とたんに口の中に甘い液体が流れ込む。
「ぐっ・・・曹操、何を」
「黙って飲み込め!」
吐き出そうとする呂布のあごを押さえつけ無理矢理に閉めると、床に押さえつける。
呂布は衝撃に負け、その液体を飲み込んでしまった。
その様子に満足した曹操はまた微笑むと、呂布の元から離れていった。
「それでは薬が効いてくるまで楽しませてもらおうかな」
呂布から少し離れた椅子に腰掛けると、曹操は杯を手に取った。
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