その他

□金色の預言者
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小春日和の中、昼寝をするアマテラスの上に影が落ちた。
「Hi、アマテラス君」
薄く目を開けるとそこには金色の・・・
「なんでい、またお前か!とっととどこか行っちまえこのいんちき預言者!」
頭の上でイッスンがはねながらわめいている。
アマテラスはゆっくりと起き上がると体を伸ばした。
「おや、いたのか。ソーリーソーリーあまりに小さすぎて気がつかなかったよ。ゴムマリ君」
ウシワカはそういって悪戯っぽく笑った。
「なんだとー!」
イッスンは頭から湯気を出しながら跳ね回る。
いい加減にうるさくなったのかアマテラスは後ろ足で頭の上を掻いた。
イッスンは慌てて足の届かないところに移動した。

それで頭が冷えたのか、イッスンはため息を1つ吐くとアマテラスの上にちょこんと座りなおした。
「けっ、お前がそういうのならしかたがねえな」
「ふふっ、ユーたちは相変わらずだね」
「そんなことよりも早く用件とやらをいいやがれってんだ」
ウシワカは口元に手を置くとそのまま黙り込んだ。
アマテラスは不思議そうにそんな彼を見つめる。
じっと二人は見詰め合った・・・
「おい、さっさと用件を言えよ」
「ああソーリー、アマテラス君の美貌に見ほれていたよ」
夢から目覚めたばかりのようにまだどことなくぼんやりとしながら答えた。

イッスンはまた怒りそうになったが、一生懸命に自分を制御した。
「で、なんだっていうんだよ。また予言とやらか?」
「いや、別に用はないんだけどね」
「じゃあなんで来たんだよ」
「仕事がなくてねー実に暇で暇で、何しようかな〜って思ってたら、ちょうど君たちが昼寝しているのを見つけてね、じゃあちょっとかまってもらおうかと・・・」
「―アマ公行くぞ」
「わう」
一声泣くとアマテラスはきびすを返し歩き始めた。
「なんだよ。ユーたちはとっても冷たいなぁ」
「お前が変人過ぎるんだよ」
ウシワカのたわごとをイッスンは切り捨てた。
「だいたいこっちは忙しいんだよ。こっちはお前みたいに未来が見えるわけじゃないんだか・・・」
言葉に詰まったのはふと振り返ったそこに悲しげな笑みがあったから。
「・・・なんだってんだい」
「・・・・・・」
イッスンの問いかけにウシワカはただ黙って笑うばかりだ。

「なんだなんだ!黙ってないで何とか言いやがれ!」
怒りのあまり体を紅く染め飛び跳ねるイッスンを見ながらウシワカはゆっくりと口を開いた。
「・・・ゴムマリ君は僕がすべてのフュチャーを見ることが出来ると思っているのかい?」
「出来るんじゃないのかよ!今まで散々言ってきたあれはなんだってんだよ」
怒っては見せるが、ウシワカの笑みがあまりに寂しそうで本気で怒ることができない。
顔は笑みの形を作ってはいるが、雰囲気から笑っていないことはすぐにわかった。
その微笑みはまるで感情を何も示さないガラスのように見える。ウシワカ自身もガラスのようにもろく儚く見える。まるで春の風にさえ吹かれて消えてしまいそうだ。
風がウシワカの被り物を空へといざなう。


「バッド、僕はベリーリトルの未来が見えるだけだよ。それにたとえミーがすべての未来が見えたとしても、その未来をチャンジことが出来なければただつらいだけじゃないか・・・」
春の花嵐の中ウシワカはガラスの言葉を風に溶かす。
「でもミーにはほんのわずかな未来しか見えない・・・そんなわずかな未来さえかえることは出来ない・・・」
下を向いてしまったウシワカが今どんな表情をしているのかわからない。しかしきっと先ほどまでと同じように泣くのをこらえているような笑みを浮かべているのだろうとイッスンは思った。
「そんな苦しみがユーにわかるかい?この苦しみをユーは取り払うことができるかい?」
「お・・・おれは・・・」
黙り込んだ2人の間を桜の花びらが通り過ぎてゆく。
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