その他

□中尉の気苦労
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朝、いつもの執務室からいつものようにエドとロイの喧嘩が聞こえる。
近くを通る人々はまたかと、少しほほえましそうに思いながら通り過ぎていく。
「大佐は昨日もやっただろう。今日はオレの番だ」
噛み付くように言うのは決まってエドだ。
「別に交代でやると決めたわけではないから、私が何日続けて中尉の相手を使用が自由だろう」
それを大人の対応でやんわりと受け答えするのが大体ロイだ。
「大人の癖に卑怯だぞ」
ロイは今まで椅子に座っていたが、立ち上がるとエドを見下ろす。
「私は大人だからいいのだよ。卑怯なことだって時には必要だ。それに私は君が言ったように大人だからな、鋼のより格段に巧い。なあ、そうだろ中尉」
ロイは仕事中のリザを見つめて言う。
「オレだって経験をつめば巧くなれる!だから練習のために多くやったっていいだろ」
「お前みたいな下手なのに毎日やられたら、中尉は大変だろうなぁ」
口元に手を当て、わざとらしく首を振る。
「むー。大佐なら何回もやらしてくれる人が沢山いるだろ。そいつらと毎日やってろよ」
「わかってないな、鋼の。私は誰でも良いというわけではないのだ。中尉のは形、色ともに文句の出ようのないくらいに最高だ。これを越えるものなどそう簡単にはいない」
かなり熱く語っているが、当の本人であるリザは相も変わらず仕事に精を出している。
「大佐は穴のことしか語ってないじゃないか。それなら地の果てまでも理想の穴を探しに行けば?」
「中尉は穴だけが素晴らしいのではない。肌質もとても極め細やかだし、骨の形もいい。それにな・・・」
ロイはウインクすると人差し指を左右に振る。
「私が旅に出ている間の欲望を誰が満たしてくれるというのだ?否、そんな者はいやしない。もはや私の欲望は中尉以外のものでは満たせない!」
「大声で欲望とか言うなよ。この変態!」
「何とでも言うがいい。私は本能に従っているだけだ。だが、君の欲求はただの好奇心だろう。大人の女性に触れることへの胸の高鳴り。そんなモノは愛でもなんでもない」
「違う!俺はちゃんと中尉が好きだ。やっている最中に失敗しても優しく間違いを教えてくれるし、終わった後、頭を撫でてくれるのとかすごく嬉しい。だから毎日でもやりたい。まだオレは未熟かもしれないけど、中尉のためだったらきっと巧くなれる」
ロイは口元に手を当てしばし考え込んでいたが、ようやく考えがまとまったのか口を開いた。
「我々が口論していても何の問題も解決しない。ここはやはり穴の持ち主に決めてもらおうか」
2人はほぼ同時にリザのほうを向く。
「中尉どちらがいい?もちろん私だろうな」
「もちろんオレだよな」
リザはため息をひとつ吐くと顔を上げた。
「2人とも毎朝毎朝くだらないことで喧嘩しないの。それに私には2つ穴があるのだし、2人でやるっているのはどう?」
「「断る。こいつとなんか出来るか!!」」
ロイとエドはみごとに声をハモらせる。
「そう、それなら一生2人で喧嘩してなさい。べつに私は2人が相手してくれなくても困らないから」
そういってポケットから赤いピアスを取り出すと、耳につけようとする。
「待ってくれ、ちゃんと話し合いで決着をつけるから!」
「そうだ、早まっちゃいけない」
大慌てでリザをとめようとするロイとエドに、リザは微笑みながら言った。
「これからも喧嘩しないわよね」
「も、もちろんだ」
「うん!話し合いがつかなかったら2人でやることにするから」
異様な早口で会話する2人。
「とりあえず今日はどうする?」
「じゃんけんとかどうよ」
「よし、三回勝負な。じゃんけんぽん!」
「あいこで、しょ!」
こうして毎朝恒例となるジャンケン大会の第一回目が始まった。
「あー!大佐今のは後出しだぞ!」
熱く燃える2人を横目に、リザはコーヒー片手に静かに微笑む。
「男って馬鹿ね。ピアスのためだけにこんなに騒ぐなんて。ねぇハヤテ号、何がそんなに面白いともう?」
ブラックハヤテ号は首を傾げるだけだった。

「「じゃんけんぽん!」」

そんなオチ。

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